
本記事では、動物病院の開業をお考えの獣医さん向けに必要な手続を解説します。
動物病院開業時に必要な手続は?
下記の手続が必要です。
- 診療施設開設届
- 動物病院平面図
- 獣医師免許証の写し
- 定款(※法人の場合)
場合によっては、下記の手続も必要になります。
- X線装置備付届
- 動物取扱業届出書
診療施設開設届
動物病院の開業に先立ち、許可や認可は不要です。
しかし、都道府県知事宛に「診療施設開設届」を提出しなければなりません。
診療施設開設届は開設時だけでなく、休止や廃止等の事由が生じた日から10日以内に提出します。
届出は「発生後」でなければ受付けられませんので、忘れないようにしましょう。
万が一遅れた場合、遅延理由書等の提出を求められる場合があります。
動物病院平面図
院内の平面図を作成します。
寸法や縮尺のほか、出入口、受付、診察室、設置する場合にはX線室や手術室等を記入します。
診療施設の基準に注意
動物病院の開業に許可等は不要ですが、施設の構造設備についての基準は設けられています。
具体的には下記の通りです。
- 飼育動物の逸走を防止するために必要な設備を設けること
- 伝染性疾病にかかっている疑いのある飼育動物を収容する設備には、他の飼育動物への感染を防止するために必要な設備を設けること
- 消毒設備を設けること
- 調剤を行う施設にあっては、次のとおりとすること
- 採光、照明及び換気を十分にし、かつ、清潔に保つこと
- 冷暗貯蔵のための設備を設けること
- 調剤に必要な器具を設けること
- 手術を行う施設は、その内壁及び床が耐水性のもので覆われたものであることその他の清潔を保つことができる構造であること
- (1)X線診察室の構造設備基準
- 人が常時立ち入る場所における実効線量が1週間につき1mSv以下になるようにしゃへい物を設けること
- X線診察室である旨を示す標識を付すること
- X線診察室以外の診療要放射線装置等の使用室に関する構造設備の基準は、獣医療法施行規則第6条の2から第6条の11までに定めるところによること
飼育動物の逸走を防止するために必要な設備を設けること
- ケージ、杭・保定枠等のけい留施設
- 動物が自力で開閉できない構造を有した診療施設の扉、窓 等
伝染性疾病にかかっている疑いのある飼育動物を収容する設備には、他の飼育動物への感染を防止するために必要な設備を設けること
- 隔離して収容できる施設
- 檻・ケージの間に間仕切り板を設置する 等
消毒設備を設けること
- 煮沸消毒器、オートクレープ 等
- 手指消毒設備、滅菌手洗い器 等
- 伝染性疾病にかかっている疑いのある飼育動物を診察した診察台、収容設備等を消毒する噴霧器、散霧器 等
採光、照明及び換気を十分にし、かつ、清潔に保つこと
窓、照明、換気扇等
冷暗貯蔵のための設備を設けること
冷蔵庫等の冷暗貯蔵ができる設備
調剤に必要な器具を設けること
調剤台、はかり、薬匙 等
手術を行う施設は、その内壁及び床が耐水性のもので覆われたものであることその他の清潔を保つことができる構造であること
内壁(床面から概ね1.2mの高さ)及び 床がコンクリート、モルタル、タイル等の耐水性材料
X線診察室の構造設備基準
遮へい物はコンクリート、鉛入合板、鉛入カーテン、鉛入衝立 等
獣医師免許証の写し
獣医師が複数名いる場合、全員分の写しが必要です。
裏書きがある場合、裏面も忘れずに提出しましょう。
定款(法人の場合)
開設者が法人の場合、定款の目的に「動物病院の経営」と記載されていることが必要です。
X線装置備付届
院内にX線設備を設置しなければ、提出の必要はありません。
X線装置を設置、更新、増設等した場合、測定日から6か月以内の「電離放射線漏えいエックス線量測定報告書」と、下記のうちから適切な書類を添付しなくてはなりません。
- 高エネルギー放射線診療装置備付届
- 診療用放射線照射装置備付届
- 放射線同位元素装置備付届
- 診療用放射性同位元素・陽電子断層撮影診療用放射性同位元素備付届
動物取扱業届出書
外来だけでなく、入院・宿泊施設を設ける場合や、トリミング施設等を設ける場合、動物取扱業登録をしなくてはなりません。
動物取扱業登録については、下記ページをご覧下さい。
税務署等への提出書類
ここまでは「動物病院の開業」に必要な書類を見てきました。
下記は動物病院に限らず、個人事業の開始時に必要な書類です。
- 個人事業の開業・廃業等届出書(個人事業の場合)
- 青色申告承認申請書
- 事業開始等申告書
- その他の書類
個人事業開業届出書
税務署宛に「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要です。
提出期限は「開業から1か月以内」。
国税庁HPより、様式のダウンロードが可能です。
法人の場合、「法人設立届出書」を提出します。
青色申告承認申請書
開業すると自分で確定申告をする事になりますが、確定申告には白色・青色の2種類が存在します。
当事務所でも、開業時には青色申告を選択しました。
理由は、青色申告承認申請書を提出し、確定申告で青色を選択すると、最大で65万円の「青色申告特別控除」が受けられる事です。
ただし、65万円控除には青色申告承認申請書の提出の他、「複式簿記」の形式での記帳や、損益計算書・貸借対照表の添付が要件となっています。
この制度は任意で、白色を選んだ人でも後から青色に変更する事もできますのでご安心ください。
提出期限は原則、開業日から2か月以内。例外として、開業日が1月1日から15日までの間なら同年3月15日までです。
こちらの様式も国税庁HPよりダウンロード可能です。
事業開始等申告書
各都道府県の税事務所に事業開始を知らせるための書類です。
ややこしいのですが、税務署とは別です。
開業届や所得税、消費税は国税ですが、この書類は個人事業税という都道府県税に係る届出なので、各都道府県に設置される「税事務所」へ提出します。
神奈川県の場合、こちらから様式をダウンロード・詳細を確認できます。
提出期限は、開業から1か月以内です。
その他の書類
その他、必要に応じて下記の書類を提出します。
- 青色専従者給与に関する届出書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
- 消費税課税事業者選択届出書
獣医師会への加入も
任意ですが、獣医師会への加入も視野に入れておきましょう。
まとめ
本記事では、動物病院の開業時に必要な手続について解説しました。
動物病院開業に必要な書類は2種類。
- 診療施設開設届
- X線装置備付届
個人事業開始時に必要な書類は最低でも3種類です。
- 個人事業の開業・廃業等届出書(個人事業の場合)
- 青色申告承認申請書
- 事業開始等申告書
- その他は必要に応じて
これから動物病院を開業しようとしている方のお役に立てば幸いです。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。