
法人設立をお考えになった時、必ず必要になるものが「定款」ですが、定款の認証方法に平成31年「テレビ電話での認証」が追加されました。
本記事では、令和2年に更に使いやすくなった「テレビ電話での定款認証」について、わかりやすく解説します。
Contents
そもそも定款って?
定款(ていかん)とは、会社の根本的なルールを書面にしたもので、法律で決められた事項とご自身たち(発起人)で決めた事項を記載します。
この定款を作成した場合、「認証」を受けなければなりません。
※一部法人は不要です。
紙か電子かを選べる!
紙媒体で定款を作成する事もありますが、当所で承る定款作成の過半数は電子定款です。
「紙」か「電子」のうち、どちらでなければいけない!というルールはなく、お客様に選んでいただけます。
電子定款って何?
電子定款は、定款をPDFファイルで作成し、CD-RやUSBメモリなどの媒体に記録したものをいいます。
難しい言葉ですと「電磁的記録」といいます。
電子認証は自宅で完結する?
このページを開いた方の中には、「電子認証っていうくらいだから自宅で完結するのだろう」とお考えになっている人もいるかもしれません。以前のぼくが、そうでした。
残念ながら、インターネット環境があれば自宅で済ませられるというお手軽なものではありません。
事前に公証役場に連絡し、内容を確認してもらったり、認証後のデータは公証役場へ直接受取りに行かねばなりません。
この際、代表発起人以外の委任状等も持参しなくてはならず、不慣れな方だと紙媒体での定款認証手続以上に時間がかかる事になります。
電子定款のメリットは?
高額取引の際、契約書に収入印紙や収入証紙などが貼付されたのを見た事があるのではないでしょうか。
取引に伴い作成される契約書のような文書は、印紙税法により課税対象となります。
定款もこの「文書」にあたるので、紙媒体で定款を作成した場合には4万円の収入印紙を貼付します。
※一部法人では、異なる場合があります。
いっぽう、電子定款を作成した場合には4万円の印紙税が不要となります。
デメリットもある
4万円のコスト削減は大きなメリットですが、しっかりとデメリットもあります。
電子定款の作成には、専用ソフト・機器が必要です。
これらを揃えるのに4万円~7万円ほどの費用がかかりますので、ご自身で作成から認証までをお考えなら±ゼロです。
士業など専門家に電子定款の作成を依頼すれば、既にこれらの用意があるところも多いので対応してくれるでしょう。
定款の電子認証の流れ
- 定款をPDFファイルに変換
- 公証役場に送信
- 公証人の認証
- 認証済みデータの受取り
1.定款をPDFファイルに変換
定款の作成自体はWord等の文書作成ソフトを使用しますが、作成した文書はPDFファイルに変換する必要があります。
2.公証役場に送信
変換したPDFファイルを、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を経由し、公証人宛に電子定款を送信します。
送信時に使用するのは「申請用総合ソフト」です。
これは登記・供託オンライン申請システムより無料ダウンロードできます。
紙の定款では、発起人全員が押印しまsが、電子定款には押印ができません。
そこで、発起人の代表者が押印のかわりに「電子署名」を付与します。
電子署名の付与
電子署名を付与するには、先ほどのソフトと同じ登記・供託オンライン申請システムより「PDF署名プラグイン」を使ってします。
3.公証人の認証
電子認証を行うのは、会社の本店所在地を管轄する法務局(または地方法務局)に所属している公証人です。しかし、公証人なら誰でも良いというわけにはいかず、法務大臣から指定を受けた”指定公証人”でなければ電子認証はできません。
4.認証済みデータの受取り
公証人が認証した電子定款は、公証役場へ赴きCD-R等を受け取る事になります。
この際、必要なものは下記の通りです。
- CD-R等の記録媒体
- 電子定款をプリントしたもの…2通
- 発起人全員の印鑑証明書
- 電子署名をした発起人以外の委任状
- 認証手数料
- 資本金により変わりますが3万~5万円ほどです
- 身分証明書
- 印鑑
電子認証に必要なものは?
- 文書作成ソフト
- PDF変換ソフト
- 電子証明書付のマイナンバーカード
- ICカードリーダライタ
- 電子署名ソフト
- 電子署名のプラグインソフト
文書作成ソフト
Wordや一太郎など、文書が作成できるソフトなら構いません。
紙・電子双方に共通しますが、”手書き”での作成は認められません。
PDF変換ソフト
無料でPDF変換ができるソフトはありますが、電子定款の作成には「電子署名挿入機能」のあるソフトが必要となります。
令和5年1月現在において、この機能がついているPDF変換ソフトは有料ソフトのみとなっていますので、ご自身で定款の作成から認証までの手続をされるつもりなら、購入をご検討ください。
電子証明書付のマイナンバーカード
”通知カード”ではなく、官公署で発行された顔写真付きのマイナンバーカードが必要となります。
マイナンバーカードの交付申請にあたり、電子証明書付の6桁の暗証番号を決める必要がありますので、こちらの番号をご用意ください。
なお、入力の際に3回間違えますとロックがかかります。
解除には市町村役所へ出向かなくてはなりませんので、早めに確認しておいてください。
ICカードリーダライタ
パソコンからマイナンバーカードを読み込む際、ICカードリーダライタを使用します。
家電量販店でお買い求めいただけますが、「マイナンバーカード対応」のものを選ばなくてはなりません。
電子署名のプラグインソフト
電子定款作成にあたり、電子署名のプラグインソフトが必要になります。
Adobe Acrobatをご利用の場合、登記・供託オンライン申請システムのPDF署名プラグインソフトを使って付与できようになります。
面倒だと感じたら専門家へご相談を
以上、電子定款の認証手続について解説しました。
ここまで読むだけでも「面倒くさい」「難しそう」だと感じた方もいらっしゃるかと思いますが、定款認証は何度もするものではないでしょう。
あなたの人生において不慣れな手続に悪戦苦闘するよりも、専門家に任せて本業に専念する方が得策という事もあります。
もちろん、ご自身の会社ですから1からご自身でやってみるのも良い勉強だと思います。
当所では、定款や設立総会の議事録、計算書類の作成等、創業に必要な手続をお手伝いさせていただきますので、開業や法人成りをお考えの際に困った事があればお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人は
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。
会社やクリニックをつくるお手伝いさせていただく身として、健康第一なので自炊を心がけています。冬はお鍋が美味しいですよね。
まだまだ寒い日が続きますので、ご自愛くださいね。