
この記事では、ペットブリーダーになるための注意点や必要な資格や手続、かかる費用などをまとめます。
- ペットビジネスの動向
- ブリーダーになるには
- 必要資金(目安)
- 必要な資格・実務経験
- 必要な登録・許可
- 開業「後」に必要な手続
Contents
副業ブリーダーが増加傾向に
ブリーダーとは?
ペットや家畜など、生き物をブリーディング(繁殖)して育て、販売等を行う職種の総称です。
本記事では家畜ではなく、犬・猫を育てるペットブリーダーを前提に進めていきますね。
対象となるペットは、犬猫、うさぎ、ハムスターなどの小動物、鳥類、爬虫類、観賞用の魚類等、多岐に渡ります。
販売先は個人事業やペットショップ、一部で警察犬や盲導犬など、専門性の高い現場で活躍できる動物を育成する事もあります。初期投資や運転資金等、他のビジネスと比較すれば抑えられるとの理由から、副業でブリーダー業を営むケースが増えています。
すぐに収益化できるビジネスではない
ペットショップと比べ、初期投資や運転資金がぐっと抑えられる事、新規参入が難しくない事から、安易に手を出す人もいます。
しかし、簡単に収益化できる職種ではない事を重々ご理解ください。
元々動物が好きで、犬猫との共同生活、その成長を楽しめる人にとっては、運が良ければ収益に繋がる”一石二鳥”ビジネスかもしれません。
けれど、「ビジネス」を大前提に考えてしまうと、思ったように繁殖が進まない、頭数が少ない、売れ残ってしまった…こんな場合にはガッカリしてしまうでしょう。
ブリーダーの開業には、登録や資格取得が不可欠である事も考えると、簡単なビジネスとは言えません。
ブリーダーになるには
とはいえ、本記事をご覧の方はブリーダーになる!と意気込んでいる事と思います。
ブリーダーになるには、
- 使用施設を設置する場所
- 資格 または 実務経験
- ケース別の登録・許可
が必要です。
開業に必要な資金は?
ペットブリーダーとして開業するにはどのくらいの資金が必要なのか。
試算してみましょう。
対象は犬、自宅の場合です。
内容 | 金額(目安) |
繁殖犬 女の子さん2頭 | 20万~80万円 ※品種や血統により異なる |
ケージ、トレー 給水器 フードストッカー、ボウル等 | 2~3万円 |
蓋付きのゴミ箱(汚物用) | 2,000円 |
クーラーボックス (遺体一時保管用) | 2,000円 |
第一種動物取扱業登録 申請手数料 | 15,000円 |
合計 | 275,000円~885,000円 |
※洗い場やエアコン、照明設備等は自宅設備を利用し、可能な限り費用を抑えた場合です。
飼養施設設置場所について
ペットブリーダーとして新規開業する場合、自宅や家族の所有物件に飼養施設を設置するのが一般的です。
ここで注意したいのが「用途地域」。
用途地域は、住居地・商業地・工業地など市街地の大枠として利用目的を定めているもので、建てられる建築物の種類が決まっています。
自分が飼養施設を設置する場所が用途地域にあたるかどうかは、各市町村役場に申し出て調べます。
第一種・第二種低層住居専用地域や、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住居地域では、団地の間に最大15㎡(約4.54坪)までの制限が設けられています。
ご自身が飼養施設を設置しようとする場所が広さ制限を受けるかどうか、事前に確認しましょう。
ブリーダー開業に必要な資格・実務経験は?
犬猫のブリーダーとして開業するには、第一種動物取扱業登録が必要です。
この第一種動物取扱業登録をするには、事業所事に「専属」で「常勤」の「動物取扱責任者」を1名以上(最低1名)配置することが義務づけられています。
動物取扱責任者とは?
まず、下記を満たす必要があります。
- 「所定の課程修了」+「常勤で半年以上の実務経験」または「取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる1年以上の飼養従事経験」
- 「所定資格取得」+「常勤で半年以上の実務経験」または「取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる1年以上の飼養従事経験」
- 獣医師または愛玩動物看護師免許の取得
「取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる1年間以上の飼養に従事した経験」って何?
音読すると魔法使いのような気分になれるほど長い要件ですが、
- 雇用関係のない形で飼養に従事した経験(ボランティア等)
- 常勤ではない雇用形態で、動物取扱業と同等と認められる飼養に従事した経験
がこれに当たる、とされています。
要件に該当するかどうか、各自治体の判断に委ねられている部分が大きいので、所轄の動物愛護センターへ確認しましょう。
ブリーダー開業に必要な登録・許可は?
下記の登録・許可が必要です。
種別と飼養頭数 | 必要な登録・許可 |
---|---|
ドッグブリーダー 飼養頭数10頭未満 | 第一種動物取扱業登録 |
ドッグブリーダー 飼養頭数10頭以上 | 第一種動物取扱業登録 動物飼養(収容)許可 |
キャットブリーダー 飼養頭数不問 | 第一種動物取扱業登録 |
第一種動物取扱業って何?
下記に当てはまるビジネスの事をいいます。
- 対象の動物を取り扱う
- 業として行う
対象の動物は犬猫などの哺乳類、インコやフクロウなど鳥類、トカゲや蛇などの爬虫類です。
「第一種動物取扱業」登録申請の流れ
横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市を除く神奈川県内の場合です。
- 前提条件(都市計画法・建築基準法等)の確認
- 必要書類の準備
- 申請手続・現地調査
- 登録決定・登録証の交付
前提条件の確認
開業する場所を管轄する市町村の担当課(都市計画課、建築指導課など)へ事業内容を説明し、営業できる場所かどうかの確認をします。
なぜなら、第一種動物取扱業を営む事ができない または 建築制限のある地域があるからです。
また、一定数以上の動物を取り扱う場合、「動物飼養(収容)許可」が必要になる事もあります。
必要書類は?
必要書類 | 備考 |
---|---|
第一種動物取扱業登録申請書 | 1業種ごとに1枚 正副2部 |
動物取扱責任者の資格要件を示す書類 | |
動物の愛護及び管理に関する法律第12条第1項第1号から第7号の2までに該当しないことを示す書類 | |
事業所及び飼養施設の土地及び建物について必要な権現を有することを証明する書類 | |
(様式第1別記)第一種動物取扱業の実施の方法 | 販売、貸出業のみ |
飼養施設の平面図、付近の見取図 | 飼養施設がある場合 |
ケージ等の規模を示す平面図・立面図 | 犬猫販売のみ |
登記事項証明書(原本)…法人の場合 | 法人のみ |
役員の氏名及び住所を記載したもの(任意様式)…法人の場合 | 法人のみ |
(様式第2別記)犬猫等健康安全計画 | 犬猫販売のみ |
申請手数料 | 1業種につき、15,060円 |
動物飼養(収容)許可って何?
設置しようとする飼養施設が下記のいずれにも該当する場合、保健所長の動物飼養(収容)許可を受けなければなりません。
- 知事又は市長が指定する区域内に飼養施設を設置する場合
- 一定の動物の飼養・収容をしようとする場合
許可申請が必要な区域は、都道府県知事または市長が指定していて、保健所で確認をとることができます。
例えば、神奈川県内において横浜市、茅ヶ崎市どちらの場合でも、犬は10頭以上(子犬であっても)許可が必要です。
開業時には指定の飼養頭数未満だったとしても、「長期的に考えると到達するかも…」という場合には、開業時に許可申請しておきましょう。
「動物飼養(収容)許可」申請の流れ
- 所轄保健所との事前協議・申請書類の確認
- 申請書類の準備・作成
- 申請手続・現地調査
- 結果通知・許可証の交付
開業後にも必要な手続がある
ペットブリーダー開業に伴い、業務上必要な許可や登録だけでなく、事業規模に対応した手続が「法定」されています。
個人事業の場合
下記の書類を税務署へ提出します。
書類名 | 提出期限 |
---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業開始日から1ヶ月以内 |
青色申告承認申請書 | 事業開始日から2ヶ月以内 ※1月1日から1月15日までに開始した場合は3月15日まで |
青色事業専従者給与に関する届出書 | 専従者を使用する事になった日から2ヶ月以内 |
源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | 原則、適用を受けようとする月の前月末日まで |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 事業開始日から1ヶ月以内 |
消費税課税事業者選択届出書 | 必要に応じて12月31日まで |
法人の場合
書類名 | 提出期限 |
---|---|
法人設立届出書 | 設立日から2ヶ月以内 |
給与支払事務所等の開設届出書 | 給与支払事務所等を設けた日から1ヶ月以内 |
青色申告承認申請書 | 設立3ヶ月経過日と、最初の事業年度終了日のうち、いずれか早い日の前日まで |
源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | 原則、適用を受けようとする月の前月末日まで |
消費税課税事業者選択届出書 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで |
棚卸資産の評価方法の届出書 | 確定申告の提出期限まで |
減価償却資産の償却方法の届出書 | 確定申告の提出期限まで |
自治体への提出書類
都道府県は「各税事務所」、市町村は「市税事務所または市町村役場の法人市民税課等」へ提出する事になります。
書類名 | 提出期限 |
---|---|
法人設立等申告書(都道府県) | 設立日から2ヶ月以内 |
法人設立・事務所等開設申告書(市町村) | 設立日から2ヶ月以内 |
まとめ
今回はペットブリーダーを新規開業するのに必要な資格や許可・登録申請等々をご紹介しました。
- ペットビジネスの動向
- ブリーダーになるには
- 必要資金(目安)
- 必要な資格・実務経験
- 必要な登録・許可
- 開業「後」に必要な手続
動物事業といっても範囲は広く、必要な許可や登録、確認事項がそれぞれ異なり、かなり煩雑です。
もしお困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。