
本記事では、プロバイダ責任制限法について解説します。
プロバイダ責任制限法とは
プロバイダ責任制限法は、他人の権利を侵害する違法な投稿の駆逐を通し、健全なインターネット環境を整備するために制定された法律です。

プロバイダとは
プロバイダ責任制限法の「プロバイダ」は、「特定電気通信役務提供者」のことをいいます。
「特定電気通信役務提供者」とは、特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者とされています。
もう少し分かりやすく言えば、「不特定多数の受信者がいることを前提に、システムを提供、またはシステムと受信者との仲介をする人」がプロバイダです。

責任制限とは
プロバイダはあくまで「仲介」に過ぎません。

掲示板に誹謗中傷を書き込んだ投稿者と、被害者である受信者がいる場合。
受信側から「誹謗中傷に該当する投稿を削除して欲しい」と申出があり、プロバイダが削除したとします。

これに対し、投稿者から「自分の書き込みを無断で削除することは表現の自由を侵害している」と憤怒の連絡が来るかもしれません。

こうなると、誰も恐ろしがって表現の場を提供する仲介をやりたがりません。
こうした事態を避けるべく、プロバイダが追う責任は制限してあげようとの主旨から「プロバイダ責任制限法」という名前になりました。
プロバイダ責任制限の対象
具体的に、プロバイダの責任が制限される要件は下記の通りです。
「他人の権利を侵害した情報が不特定の者に送信されることを防止することが技術的に可能で、且つ、他人の権利が侵害されていることを知っていたときや、知ることができたときでなければプロバイダは損害賠償の責任を負わない」
プロバイダ責任制限法3条1項
「その情報の流通によって他人の権利が侵害されたと信じるだけの相当の理由があったのでその情報を削除した場合や、権利を侵害されたとする者から削除の申し出があったことを発信者に連絡したのに7日以内に反論がないのでその情報を削除した場合は、プロバイダは発信者に対して損害賠償の責任を負わない」
プロバイダ責任制限法3条2項
何だか長ったらしくて分かりづらいと思うので、簡潔にまとめます。

ネット上で誹謗中傷を受けた場合
プロバイダ責任制限法にて、プロバイダが一定程度の保護を受けることはご説明の通りです。
あくまで仲介に過ぎないプロバイダは発信者、受信者双方に配慮しなくてはならず、難しい立ち位置であることに変わりはありません。
では、ネット上で誹謗中傷を受けた被害者はどうすればいいのでしょうか。
考えられるのは、裁判所の「仮処分命令」です。
仮処分の申し立て
プロバイダ責任制限法により、ネット上での権利侵害に対し、発信者情報開示請求などの手続が考えられます。
しかし、投稿の削除や発信者情報の開示についてはプロバイダに決定権があり、必ずしも受信側の期待する措置をとってもらえるとは限りません。
そこで、裁判所への「仮処分」の申立が考えられます。
通常、訴訟では証拠調べや証人尋問などに時間を要し、判決まで数ヶ月以上かかります。
いっぽう、仮処分の場合には数週間ほどで裁判所から命令が下されることもあります。
ただし、仮処分の申立には通常訴訟よりも専門的な知識が不可欠なので、弁護士までご相談ください。
まとめ
本記事では、プロバイダ責任制限法について解説しました。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。