
相続が開始したとき、相続人には次の3つの選択肢があります。
- 単純承認
- 相続放棄
- 限定承認
本記事ではこのうち、限定承認について解説します。
限定承認とは
限定承認は、相続人が遺産の一部のみを承継したい場合に利用します。
例えば、被相続人の債務が大きく、そのまま承継すれば不利益を被るような場合には、相続で得たプラスの財産の範囲において債務・遺贈を弁済するという条件付きでの相続が可能となります。
逆に言うと、プラスの財産を超えた被相続人の債務は返済する義務がない点は相続人のメリットだと言えます。
限定承認がおすすめな場合
限定承認を検討すべきケースは下記の通りです。
- 被相続人の財産について、借金の有無が不明確な場合
- マイナスの財産があるのは承知で、相続財産の中に欲しいものがある場合
限定承認の流れ
限定承認をするには、家庭裁判所への申立が必要です。

申述をすると、家庭裁判所は相続人の中から「相続財産管理人」を選任します。
相続人が1人しかいない場合は、その人が財産の清算をします。
官報での公告
限定承認のあと、5日以内に限定承認したことなどを官報に掲載して公告しなくてはなりません。
申述人
申述は、相続人全員が共同して行わなければなりません。
期間
相続人は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に限定承認の申述をする必要があります。
ただし、特別な事情がある場合には、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てにより、家庭裁判所に期間を延ばしてもらえる場合もあります。
申述先
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所にて行います。
家庭裁判所はこちらから調べられます。
費用
申述に必要な費用は次の通りです。
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(※申立てをする家裁に問い合わせると教えてもらえます。)
この他、戸籍謄本類の取得について請求費用がかかります。
戸籍謄本は1通450円、除籍・原戸籍謄本は1通750円程度ですが、自治体により異なる場合がありますので、適宜確認しましょう。
申述に必要な書類
各事例により収集書類は異なりますが、共通して必要な書類は下記の通りです。
- 申述書(PDF)
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人全員の戸籍謄本
- 被相続人の子が死亡している場合、その子の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
不動産がある場合
不動産がある場合、不当に安く売却されることを防ぐために、限定承認者は相続財産を競売に付さなければなりません。
この際、競売の予納金としてまとまった金額が必要になる場合があります。
いっぽう、先買権を使って不動産を手元に遺す場合、家庭裁判所が選任する鑑定人の評価に基づく金額を支払います。
ここで行われる鑑定人の選任と鑑定にかかる費用は、限定承認者が負担します。
まとめ
本記事では、相続の限定承認について解説しました。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。