
本記事では、相続の話題で必ずと言っていいほど登場する「遺留分」について解説します。
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遺留分は国が認めた最低限の権利
遺留分は、亡くなった人の法定相続人に最低限保障される「相続分」です。
法定相続人については、下記の記事にて詳しく解説しています。
ざっくり言うと、配偶者、子、父母・祖父母など、兄弟姉妹のことをいいます。
このうち、遺留分を持っているのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。
誰にも邪魔できない
この遺留分は、第三者では打ち破ることのできない権利として君臨しており、いくら遺言書で
愛人に全てを相続させる
と書いたとしても、それがそのまま叶うわけではありません。
なぜなら、遺留分権を持っている相続人は、自分の権利を侵害する相手に「邪魔をするな」「返せ」と請求することが認められているからです。
遺留分が認められるのは
遺留分が認められるのは、次の人達です。
- 配偶者
- 子、孫など
- 父母、祖父母など
認められない親族もいる
反対に、遺留分が認められない親族もいます。
- 甥姪
- 兄弟姉妹
相続の順番は、一般の人には少々ややこしいかもしれないのでここでは端折ります。
遺留分はどれくらい?
では、遺留分がある相続人がもらえるのは、相続財産のどれくらいなのでしょうか。
答えは、法定相続分の半分です。
こうなると、法定相続分は何円なの?と更にややこしくなってしまいますよね。
遺留分の計算方法
遺留分を計算するには、
- 全体でどのくらいの遺留分が認められるか
- 個別の遺留分はどのくらいか
と、「全体」▶「個別」の順に算出することになります。
本記事ではこれ以上掘り下げませんが、正確に算出するには「相続できる人」と「相続財産」を確定する必要があることは覚えておいて下さい。
遺留分を侵害されたら
もし、自分がもらえるはずだった遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求を行うことができます。
聞き慣れない言葉がたくさん登場し、混乱されている方もいるかもしれませんが、「自分がもらえる分をお金で返してもらう手続き」のことをいいます。
遺留分減殺額請求と遺留分侵害額請求
本項は、ちょっとした小話をさせてください。(お急ぎの方は次項へどうぞ。)
2019年7月1日、改正民法が施行されました。
施行とは、新しい法律がデビューしたことだと考えて下さいね。
改正前にも遺留分はありました。
これを侵害された場合に行うのは「遺留分減殺額請求」でした。
この請求でできるのは、「自分がもらうはずだった遺産をそのまま返してもらう手続き」でした。
いっぽう、現行の「遺留分侵害額請求」は「お金」で返してもらう手続きを行うことになり、減殺額請求は改正と共になくなりました。
どうしてこのような改正が成されたのか、また別の機会にお話させてくださいね。
遺留分侵害額請求の流れ
この先、自分が相続人になった場合、または、遺留分侵害額請求を受ける側になった場合。
どちらの立場になる可能性もありますから、簡単な流れをご紹介しておきます。
- 話し合い
- 調停
- 訴訟
話し合い
遺留分侵害額請求は、話し合いから始まります。
最初から裁判や差押えを想像していた方もいるかもしれませんが、実情は地味なものです。
相手が話し合いに応じてくれるのなら、方法や金額等を具体的に決定し、実行してもらえば完了です。
ここでは「合意書」のような書面を作成し、後々の蒸し返しを防ぎます。
調停
話し合いで合意に至らなかった場合や、そもそも応じてもらえない場合は、家庭裁判所に調停を申立てます。
調停については下記の記事で解説しています。
ここで合意に至れば、調停は成立となり、請求した金額の授受をおこないます。
訴訟
調停でも解決できなかった場合、最後の手段は訴訟。つまり、裁判です。
裁判所は、対象となる相続財産を評価し、その中から遺留分を計算したうえで、その金額を支払うよう命令します。
命令なので背くことは出来ません。
このフェーズに入る際は、ほとんどの方が弁護士に依頼することになるでしょうし、精神的にも疲れてしまうことが多いケースでもあります。
まとめ
本記事では、遺留分について解説しました。
当事務所で承るご相談の中で、本当によくお勉強されている方が多く、私も身が引き締まる思いです。
しかし、知識と現実は異なります。
生前に備えられる対策や、死後に取り得る手段など、専門家に相談することでよりクリアになり、任せる事でストレス少なく解決できる問題もあります。
相続に関わるお悩みは、行政書士、司法書士、弁護士などへ早めにご相談くださいね。
本記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。