本業・副業を問わず、個人事業主として業務委託の形で稼ぐ場合、開業届を出すかどうか悩みませんか。
今回は、個人事業主としてやっていくのに「開業届」は必要なのか?
提出した場合のメリット・デメリットと、必要書類について、ヲタク行政書士®がわかりやすく解説します。
とにかくわかりやすくお伝えできるよう、尽くします💪
Contents
フリーランスとは?
フリーランスは、特定の企業・団体・組織に専従せず、自分の経験・知識・技能を、サービスや成果物を通じて提供することで収入をゲットする人をいいます。
フリーランスの対義語は?
フリーランスそのものに明確な定義づけがされていないのですが、対義語は「会社員」でしょう。
一般に「就職」といえば、会社と雇用契約を結ぶことで、その会社に自分の労力を提供して給与をもらいますよね。
いっぽう、フリーランスは会社に所属せず、外部から求められたサービス・成果物を”納品・提供”するに過ぎません。
フリーランスは仲間ではなく、あくまで外注先のまま協力する人なんですね。
フリーランスに開業届は必須?
個人事業主としてやっていくには、開業届(≒個人事業の開業・廃業等届出書)の提出は必須です。
開業届は、税務署に対して「開業しました!」と報告するための書類です。
このとき、都道府県にも「開業しました」と報告しなくてはなりません。
この場合、「個人事業税の事業開始等申告書」を都道府県税事務所に提出します。
提出先、書類の名前が違う点に注意です⚠
「開業届」「個人事業税の事業開始等申告書」、いずれも税法上の義務とされています。
ただ、提出しなくても罰則規定はなく、問題なく納税することもできてしまいます。
開業届を出さなければ、確定申告しなくてもいい!と考えている方もいるようですが、原則必要です。
ここまでの流れから「出さなくても問題ないなら、いいじゃない」と考えているのなら、ちょっと待って下さい。
開業届を提出しなくては受けられない恩恵があります。
出していないと困ることがある
開業届を出すことによるメリット・デメリットをご紹介する前に、開業届を出さないと困る場面をご紹介します。
✓補助金・助成金の申請ができない
✓控除枠が狭くなる(≒節税効果が薄くなる)
具体的には、不動産や機械設備等のリース契約を結ぶとき、お子さん関連で度々発生する就労証明書提出イベント、補助金・助成金を申請するとき、毎年の確定申告です。
会社の場合、「法人登記」をしているため、不動産と同じように登記事項証明書を提出することになります。
いっぽう、個人事業主は登記をしませんので、収受印付の「開業届の写し」または、確定申告書の控えを提出することになります。
開業届を出さないということは、これらの提出ができなかったり、できても必要な記載が漏れていたりと、希望する申請・契約が叶わない可能性が高いのです💦
ただし、普段は会社員として働き、副業として個人事業を営む場合には、開業届を出す必要がありません。
不要とはいえ、収入が大きくなると開業届を提出しなくてはならない場面も出てきます🦔
開業届を出すデメリット
デメリットから見ていきます。
✓扶養からはみ出る可能性がある
失業給付金が受けられない
会社に所属し、雇用保険に加入している方は、一定要件をクリアすれば失業給付金等を受けられます。
しかし、給付を受けるには失業認定を受け、定期的な求職活動を行う必要があります。
副業を本業に据えようとお考えの方で、失業給付金を受けたい場合には、退職後、開業届を提出するタイミングに気を付けましょう。
同じく雇用保険から、再就職給付等を受けられる場合もあります。
被保険者の方には「給付を受ける権利」がありますから、希望される場合にはしっかりスケジュールを立てておきましょう💪
扶養からはみ出る可能性がある
ご家族の扶養に入っている場合、開業届の提出により、扶養から外れなくてはならないことがあります。
扶養には、税法と健康保険法の2つがあり、扶養に関わるルールが異なります。
税法上の扶養は、扶養に入る側の給与所得が年間103万円以下であることが求められます。
いっぽう、健康保険法上の扶養は、保険者である協会または組合によって加入条件が異なります。
色々ややこしいのですが、いま加入している健康保険の大元(保険者)に問い合わせると教えてもらえますよ🐰
開業届を出すメリット
ネガティブな話をしてしまったので、ここからは明るい話をしましょう。
開業届を出すことで受けられるメリットは、次の通りです。
✓脱「胡散臭い」
✓屋号を名乗れる
✓事業主以外お断り!のあれこれを使える
✓就業証明が自力で可能に
税額控除が受けられる
恐らく、創業支援を行っている方の9割超がお伝えしているかと思いますが、私からも申し上げておきます。
開業届提出によって受けられるメリット、最高位に君臨するのが青色申告の活用です。
✓青は手間がかかるぶん、利益大きい
✓白は手間がかからないぶん、利益なし
青色申告による利益には、次のものがあります。
(2)家族への給与が経費に
(3)赤字を繰り越せる
(1)所得控除最大65万円
唐突ですが、皆さんは所得税ってご存知ですか。
私はよくわからないまま、生きてきました。
売上から必要経費を差し引いた「課税所得」をもとに計算された所得税の金額を知らされ、私達は粛々と納付しています。
青色申告を活用することで、所得税を計算するベースである「課税所得」から、最大で65万円控除することができます。
白色申告の場合、この65万円控除は受けられません…!
ただし、65万円控除をフルで活用するには、
✓帳簿の電子保存
✓e-Taxでの確定申告 等
一定の要件をクリアしなくてはなりません。
(2)家族への給与が経費に
原則、自分と生計を共にしている家族への支払は、給与扱いができません。
給与として扱えないということは、経費にならないため、課税所得から控除することができません。
そうなると、家族に支払う給与を自分の所得にまとめ、自分が受け取ったものを改めて分配することになります。
節税には「所得の分散」が有効ですが、それができないため、他人を雇用した場合に比べ、所得税が高くなる可能性があります💦
ここで青色申告を活用すれば、家族に支払う給与も経費として取り扱うことができます。
奥様やご主人など、あなたの扶養に入っている方が対象の場合、「扶養控除」との併用はできません😭
扶養控除とご家族控除(青色専従者給与)、あなたの場合はどちらが節税効果を高められるのか、1度試算してみてください。
難しければ、税理士さんにご相談ください💡
(3)赤字を繰り越せる
白色申告の場合、赤字が出ても、その年限りでおしまいです。
いっぽう、青色申告を行った場合、翌年以降最大で3年の間、所得から赤字部分を引くことができます。
例えば、開業年度に赤字が100万円出た場合。
白色申告は、その年のみ相殺できます。
青色は、翌年に黒字になろうが赤字になろうが、赤字分を繰り越して計算することができます📦
脱「胡散臭い」
開業届を出すと、出していない場合と比べた場合の「身分」がしっかりします。
看板のあるお店とないお店、どちらが入りやすいか、を想像してみてください。
開業届には、事業内容を記載します。
ここで「自分が何屋さん」かを申告することとなるため、何をしているか不透明な人という胡散臭いイメージを一心することができます。
その結果、銀行の融資審査や行政等への申請時、相手の”あたり”がやわらかくなります。
屋号を名乗れる
屋号は、お店の名前だと考えて下さい。
開業届で屋号を定めた場合、口座の開設時、損害保険や共済などへの加入時に、屋号を使用することができます。
知り合ったばかりのお客様に対し、個人名義の振込先を案内すると「詐欺では…」と不安視されることもあります。
お客様を安心させてあげることも、事業者の大切な仕事ですよね😊
また、会計上の事務手続を行う際、公私の口座がまとまっていると面倒です。
この点については、個人名義でも口座を分ければクリアできますが、事業拡大を目指すのなら、誰が見ても「事業用」と明らかな口座を使用しておいて損をすることはありません👌
事業主以外お断り!のあれこれを使える
開業届を提出し、正式に個人事業者になることで、「個人事業主であること」を要件とする組織・団体等に加入したり、サービスを受けることができます。
具体的には、小規模企業共済や労働保険の特別加入枠、各経営者団体への加入です。
事業者向けの損害保険・生命保険もあり、掛金は所得控除の対象にできるものもあるため、自分自身やご家族、従業員の今後に備えることもできます。
事業資金の融資をお考えなら、開業届を出しておくことを猛プッシュしておきます!
就労証明等が自力で可能に
会社への勤務経験がある方ならご存知かもしれませんが、お子さんを保育園に預ける際、両親の就労証明書を求められることがあります。
その他、自身に関わる色々な書類を会社に請求しなくては分からない状況に置かれることも多く、手間に感じることもあるでしょう。
この点、個人事業主になると、嫌でも自分で用意する事になりますから、ややこしい手間・時間を自分で調整することが可能です。
自己管理が苦手な方にとっては、デメリットとなり得る項目ではあります😅
開業届の提出手順は
たったの2ステップです。
1.開業届の作成
開業届を国税庁HP または 税務署にて入手します。(開業届 PDF/ 税務署の管轄を検索)
必要事項は、次の通りです。
2.住所(納税地)
3.氏名、連絡先、生年月日、個人番号
4.職業(屋号)
5.届出の区分
6.開業日
7.開業に伴う届出の提出の有無
8.事業の概要
9.給与等の支払状況
私は、freeeの無料作成機能を使用しました。
【参考】開業届の作成|Freee開業
不明・不安な個所は税務署に問い合わせるか、会計業務を税理士に依頼しようと検討しているのなら、対象の税理士に相談しましょう。
2.開業届の提出
作成した開業届は、窓口、郵送、e-Taxのいずれかで提出できます。
郵送の場合、控えを返送してもらうために切手を貼付した封筒を同封しましょう。
青色申告を検討しているなら、e-Taxでの電子申請がおすすめですよ。
一緒に提出が必要かも?
開業に必要な書類は、開業届だけではありません。
下記の書類が必要なケースもありますので、忘れずに確認しましょう。
✓青色専業者給与に関する届出書
✓源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
✓所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書
✓所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書
本記事でメリットとしてご紹介した青色申告は、※の書類を提出しなくてはできないものです。
どうかどうか、お忘れなく(´;ω;`)
まとめ
駆け足になりましたが、今回は個人事業者になるために開業届が必須かどうかと、開業届提出のメリット・デメリット、提出までのステップをご紹介しました。
お恥ずかしい話ですが、税関連は私もまだまだ勉強中です。
うっかり提出を忘れていた書類もありましたね…(遠い目)
何か忘れる都度、税務署の職員が親切丁寧に教えてくれますから、不明・不安な点はどんどん相談し、すっきり解決しながら、メリットを最大化していきましょう✨
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。