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当ページでは、公正証書遺言の作成方法と必要なもの、作成のメリットと注意点を解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、遺言者が公証人と証人2名の前で告げる内容につき、公証人が遺言者の真意であると確認したうえで作成される遺言書です。
公正証書遺言の作成手順
公正証書遺言の作成は、次の流れで行います。
- 公証人への事前相談・依頼
- 必要資料の提出
- 遺言公正証書の草案作成・修正
- 予約日時に公証役場へ
- 公証人による確認
- 遺言者、証人、公証人の署名押印
- 公正証書遺言完成
1.公証人への事前相談・依頼
公正証書遺言は、士業や金融機関等を通して作成・相談することもできますが、公証役場に直接連絡し、公証人に相談しながら作成することも可能です。
ただし、全ての公証人が相談に応じられるかと言えばそうではありません。
まず公証役場に相談し、思うような反応が得られない場合には、士業等への相談をオススメします。
2.必要資料の提出
公正証書遺言には、次の資料が必要です。
- 遺言者本人の印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの)※
- 遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本(除籍謄本)
- 相続人以外に財産を残したい場合、その人の氏名・住所等がわかる住民票等※
- 不動産がある場合、登記事項証明書と固定資産評価証明書等
- 相続財産に預貯金がある場合、預貯金通帳等(コピー可)
- 遺言執行者を指定する場合、その人の身元がわかる書類等※
※1.印鑑登録を行っていない場合、印鑑登録証明書に代えて、運転免許証、パスポート、マイナンバーカード(個人番号カード)等、官公署が発行する顔写真入りの身分証明書でもOKです。
※3.相続人以外の財産を残すことを「遺贈」といいますが、対象は個人だけでなく、法人等の団体でも構いません。この場合、法人の登記事項証明書または代表者事項証明書を提出します。
※6.遺言執行者の氏名、住所、生年月日、職業等をメモしたもので構いません。
これらの準備にあたって注意してほしいのは、公証役場により必要書類が異なる点です。
1人として同じ人がいないのと同じように、遺言作成に必要な書類も全て同一というわけにはいきませんので、必ず事前確認を行いましょう。
3.遺言公正証書の草案作成・修正
提出した資料に基づき、公証人が公正証書遺言の草案を作成します。
遺言者がこれを見て修正したい箇所を摘示すると、公証人が修正してくれます。
これらのやり取りはメールで行われますが、FAX等での対応も受付けてくれます。
4.予約日時に公証役場へ
公正証書遺言の草案が確定すると、遺言者が公証役場を訪れる日時を予約します。
このとき、遺言者が赴くのが難しい場合、公証人が自宅や病院まで出張してくれますが、日当や交通費がかかります。
5.公証人による確認
遺言当日、遺言者は公証人と証人2名の前で、遺言内容を口頭で告げます。
ここで口述した内容が遺言者の真意であることを確認した上で、公証人が公正証書遺言の原本を読み聞かせ、または閲覧させ、内容に間違いがないか再度確認します。
推定相続人等の利害関係者が同席している場合、遺言者が遺言内容を話しやすいよう離席を求められることがあります。
6.遺言者、証人、公証人の署名押印
遺言の内容に間違いがなければ、遺言者、証人2名、最後に公証人が公正証書遺言に署名押印します。
7.公正証書遺言完成
公証人の署名押印が完了すれば、公正証書遺言の完成です。
完成後に公証役場へ手数料を支払い、証人に報酬または謝礼を支払い手続は終了です。
最後に正本と謄本を受け取り、自宅等で大切に保管しましょう。
公正証書遺言作成のメリットと注意点
公正証書遺言を作成するメリットと注意点は次の通りです。
- 法的に有効な書類が作成できる
- 死後の検認手続不要
- 自筆が難しくても作成できる
- 費用がかかる
- 遺言内容が必ず実現されるとは限らない
公正証書遺言 作成のメリット
1.法的に有効な書類が作成できる
公正証書遺言を作成する公証人は、裁判官や検事、弁護士等、いわゆる「法律のプロ」を経験した人から選ばれます。
自分で作成する自筆証書遺言の場合、内容が無効となるリスクもありますが、法律のプロが携わる公正証書遺言が無効になる可能性は、ほぼゼロに近いと言えます。
2.死後の検認手続不要
公証人という専門家が作成手続に携わるだけでなく、公正証書遺言の原本を公証役場で保管してもらえることから、遺言者の死後に必要な検認手続は不要です。
3.自筆が難しくても作成できる
自分で遺言書を作成する場合、一部を除き、全文を自分で書く(自書)必要があります。
公正証書遺言の場合、病気や障害により、文字を書くのが難しいものの、口頭での意思疎通がはかれる場合でも、公証人が聴き取ったものを書面にしてくれ、本人に代わって署名押印することもできます。
公正証書遺言 作成の注意点
1.費用がかかる
公正証書遺言を作成するには、費用がかかります。
自分で作成する自筆証書遺言は、ほぼゼロ円でできるため、費用をかけないで作成したい人にとってはデメリットと言えます。
2.遺言内容が必ず実現されるとは限らない
人が死亡すると同時に相続が開始します。
このとき、死亡人が遺言書を用意していれば、これに沿った手続がなされるのが一般的ですが、例外として、法定相続人全員が同意すれば、遺言書とは異なる分割を行うことも可能です。
手間や費用をかけて公正証書遺言を作成しても、その内容が必ず実行されるとは限らない点には注意が必要です。
公正証書遺言作成にかかる費用
公正証書遺言を作成する際、手数料がかかります。
手数料は、遺言の目的となる財産額に対応する形で次の通り決められています。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
上記はあくまでも「基準」とされ、具体的な算出方法が別にあります。
- 財産の価額は全体額ではなく、相続または遺贈を受ける人ごとに財産価額を算出し、その価額に対応する手数料を合算して手数料を算出
- 全体の財産額が1億円以下の場合、1で算出した手数料額に1万1000円を加算
- 公正証書遺言は「原本」「正本」「謄本」を各1部作成し、「正本」「謄本」を遺言者に交付するため、原本が4枚を超える場合、1枚ごとに250円を加算
- 公証人が遺言者の自宅、病院、福祉施設等へ出張する場合、日当と交通費を加算
公正証書遺言に関する質問・相談事例
公正証書遺言に関する質問や相談事例をご紹介します。
1.遺言書の作成時期は?
遺言書の作成は、高齢化または死期が近づいたときにするものと認識される人が多いですが、いつしても構いません。
筆者は、思い立ったが吉日と考えていて、自分の死後に不安を感じたときの作成をオススメします。
生命保険契約を結ぶときの心情に近いですね。
遺言書を作成できるのは、判断能力があるうち。つまり、健康なうちです。
下限年齢は満15歳以上と定められていますが、遺族に残したい思いがあるのなら、いつだって作成することができます。
2.遺言書を作成後に変更、取消しはできる?
遺言書は、その形式に限らず変更・取消しが可能です。
死亡人の最終的な意思を最大限尊重しようというのが遺言の目的なので、作成後の環境変化による変更等はいつでも可能です。
むしろ、変更をオススメします。
ただ、公正証書遺言の場合、新たな遺言書を作成するのに再度手数料がかかる点には注意です。
3.公正証書遺言の証人は誰に頼めばいい?
公正証書遺言作成時に立ち会う証人は、遺言者が手配する場合と、公証役場で紹介する場合とに分けられます。
遺言書自身で手配する場合、(1)未成年者、(2)推定相続人、(3)遺贈を受ける人、(4)推定相続人および遺贈を受ける人の配偶者および直系血族等は証人になれません。
実務上、弁護士、司法書士、行政書士等の専門家に依頼する場合が多く、日当として1人5000円から1万円程度の費用がかかります。
公証役場で紹介してもらう場合も、上記の専門家に同程度の日当を支払うことになります。
4.公正証書遺言の内容が漏れるのが心配…
公正証書遺言を作成する公証人には、法律で守秘義務が課されています。
公証役場で働く補助者(書記)にも、職務上知り得た秘密を漏らさない義務が課されており、採用時には本人による宣誓も行われます。
作成時に立ち会う証人についても、遺言者から秘密保持の意思表示の有無にかかわらず、遺言という非常にデリケートな事案は秘密を守って当然。秘密保持義務を負っているのは明らかだといえます。
公正証書遺言の謄本は、公証役場にて遺言者の死亡まで他人の目に触れない体制で保管されます。
公証役場による情報漏えいの報告は前例がなく、安心してご利用いただけるかと思います。
5.公正証書遺言はいつまで保管される?
遺言に限らず、公正証書全体の保存期間は20年間です(公証人法施行規則27条)。
何か特別な事由があれば、20年間を超えても、その事由が解消されるまでの間は保存されます。
公正証書遺言はこの「特別の事由」に該当するため、遺言者の死亡後50年、作成後140年または遺言者の生後170年間は保存されます。
つまり、遺言者の生死がわからなくても、170歳になるまでは保管してもらえるということです。
公正証書遺言の作り方まとめ
当ページでは、公正証書遺言の作成方法を解説しました。