当サイトの一部に広告を含みます。
当ページでは、金銭消費貸借契約書に記載すべき内容と注意点を解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
金銭消費貸借契約書とは
金銭消費貸借契約とは、借りる側が貸す側に対し、同種、同品質、同量を返還することを前提に、お金を借りる契約をいいます。
民法では、原則無利息ですが、契約ですので自由に利息を付けることができます。
当然の事ながら、法外な利率を設定すれば規制の対象となるので注意しましょう。
金銭消費貸借契約書と借用書の違い
お金の貸し借りと言えば、「借用書」を想像する人もいるでしょう。
借用書は、互いの間で資産の貸し借りを「確認」する文書であるのに対し、金銭消費貸借は「金銭の貸借」に特化し、より具体的な文書である点で異なります。
借用書の場合、一部のみ作成して貸主が保管します。いっぽう、金銭消費貸借契約書は2部作成し、当事者双方が保管します。
確実な返済を望む場合、金銭消費貸借契約書の作成をオススメします。
金銭消費貸借契約書に記載すべき内容
金銭消費貸借契約書には次の内容を記載しましょう。
- 金銭消費貸借の合意
- 対象金額
- 返済期日と返済方法
- 利息の計算方法
- 遅延損害金
- 期限の利益喪失
- 連帯保証
- その他
1.金銭消費貸借の合意
金銭消費貸借契約において、双方が金銭消費貸借であることを認識し、同意したことを記載しましょう。
民法上の金銭消費貸借契約の要件は、(1)当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約束し、(2)相手方が受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約束することの2つです。
つまり、お金の貸し借り、その後に返済方法を約束することが金銭消費貸借契約の成立要件だといえます。
合意の条項がない場合、後になって「このお金はもらった(贈与)」と主張されることもありますので、忘れずに記載しましょう。
2.対象金額
利息や返済期日なども重要ですが、まずは「元本金額」を記載する必要があります。
貸付の対象となる金額、実際に貸し付ける日も記載しましょう。
契約日と貸付日が同日である必要はありませんが、異なる場合には両方を記載しておくといいですね。
3.返済期日と返済方法
金銭消費貸借契約の目的となる金銭の返済期日と、返済方法を記載します。
返済方法には、(1)一括返済、(2)分割返済の2種類があります。
(1)一括返済の場合は支払期日は1日で足りますが、(2)分割返済の場合、期限だけでなく各支払期限における返済額まで決定する必要があります。
また、現金支払の場合には交付場所、振込の場合は振込先、振込手数料の負担者まで定めましょう。
貸し手側が利息を受ける権利を守るため、繰り上げ返済につき「貸主の同意を要する」という条項を含める場合もあります。
4.利息の計算方法
民法上、金銭消費貸借契約は無利息でも構いませんが、一般的には利息を定める場合が多いです。
利息の上限額は「利息制限法」により定められる利率を超えないように注意しましょう。
元本金額 | 上限利率 |
---|---|
10万円未満 | 年20% |
10万円以上100万円未満 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
5.遅延損害金
遅延損害金は、貸し手が借り手に貸し付けた金銭が期限内に返済されなかった場合、遅延により生じた損失や追加コストを補償するために請求できる費用です。
端的に言えば、返済期限までにかかるのが利息、返済期限以降は遅延損害金で、利率が異なる点に注意しましょう。
遅延損害金は「元金残高×遅延損害金の利率÷年間日数×遅延日数」にて算出します。
金銭消費貸借契約における遅延損害金の利率は、下記の通りです。
元本金額 | 上限利率 |
---|---|
10万円未満 | 年29.2% |
10万円以上100万円未満 | 年26.28% |
100万円以上 | 年21.9% |
ただし、金融業者による貸付の場合、20%が上限とされ、これを超える利率は違法となります。
遅延日数が延びれば延びるほど高額化する仕組みです。
6.期限の利益喪失
期限の利益は、「借り手が返済期限までの間にお金を返さなくてもいい」点を指します。
これを喪失させる条件を定めることで、貸し手の債権回収がスムーズに行えるメリットがあります。
一般的な期限の利益喪失事由は次の通りです。
- 当然喪失事由
- 請求喪失事由
当然喪失事由は、特定の事由が発生した時点で、借り手が期限の利益を喪失するものです。
例えば、借り手が破産手続開始の決定を受けた等、明らかに返済が困難となる事由などが挙げられます。
請求喪失事由は、事由発生後、貸し手が借り手に請求を行うことで期限の利益を喪失させるものです。
例えば、返済期限を○日過ぎた場合や契約で定めた内容に違反した場合などが該当します。
7.連帯保証人
連帯保証人は、単なる保証人と異なり、債務者の資力に関わらず返済義務を負います。
連帯保証人を設定する場合、金銭消費貸借契約書に明記し、かつ、当事者の1人として署名押印しなくてはなりません。
補償内容が「個人根保証契約(一定の範囲内に属する不特定債務を保証する契約)」に該当する場合、極度額と元本確定が求められる点には注意が必要です。
8.その他
1から7の他、秘密保持や反社会的勢力の排除等の条項を定めるのが一般的です。
金銭消費貸借契約を結ぶ際の注意点
(1)書面で作成する場合は収入印紙を
一般に、「印紙税法」に定められる課税文書には収入印紙を貼付しなければなりません。
金銭消費貸借契約書はこの課税文書に含まれるため、書面で作成する場合、目的額に応じた金額の収入印紙を貼付する必要があります。
電子契約システムを利用して作成する場合は非課税なので、収入印紙の貼付は不要ですが、電子データを原本とする必要があります。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
50万円以下 | 400円 |
100万円以下 | 1,000円 |
500万円以下 | 2,000円 |
1,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円以下 | 2万円 |
1億円以下 | 6万円 |
5億円以下 | 10万円 |
10億円以下 | 20万円 |
50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
収入印紙は、当事者双方がもつ署名押印済の契約書に貼付し、消印を行いましょう。
金銭消費貸借契約書に収入印紙を貼らなかった場合、契約自体は無効にならないものの、過怠税の対象となり、本来貼付すべき印紙額の3倍を支払うことになりますので注意してください。
(2)連絡先は複数抑える
金銭消費貸借契約を結ぶ際、相手方の現住所のみを控えるのではなく、職場や実家等の住所も控えましょう。
返済が滞った場合や相手と連絡がとれない場合に備えるためです。
(3)不利益な条項を見落とさない
金銭消費貸借契約書の作成を借り手、貸し手のいずれかが行う場合、作成者に有利な内容になっていないか確認しましょう。
確認の際、不明な文言等があればきちんと確認し、変更が可能なら修正を求める必要があります。
(4)公正証書にする
公正証書は、公証役場で認証を経て作成する公文書をいいます。
作成にあたり「強制執行認諾文言」を付けておくと、契約に沿った支払(返済)がされない場合、裁判を起こすことなくダイレクトに相手の財産を差し押さえることができます。
未払のリスクや法的な知識に自信がない場合、公証人の力を借りながら作成するのがオススメです。
契約書はあくまで「証拠」なので、滞納があった場合、速やかに督促(催告)を行い、然るべき手続をとりましょう。
金銭消費貸借契約書に記載すべき内容と注意点まとめ
当ページでは、金銭消費貸借契約書に記載すべき内容と注意点を解説しました。