
自分でお店を始めるとき、いきなりテナントを借りたり、自宅を改装するのは気が引けますよね。
そんな方にオススメなのが「キッチンカー」です。
キッチンカーの場合、店舗を構えなくても、車1台で開業でき、オフィス街やお店の少ない住宅街など、需要に合わせ移動しながら販売することが出来ます。
しかし、開業には色々な届出が必要です。
当ページでは、これからキッチンカー開業を目指す人向けに、必要な許可、申請方法について、できるだけわかりやすく解説します。
Contents
著者プロフィール
榊原 沙奈(さかきばら さな)
平成弐年式 やぎ座のO型。
行政書士事務所 代表を務めるかたわら、日常の疑問・不安に効く情報を発信しています。趣味は、写真を撮ること、神社をめぐること。
キッチンカーで開業する場合の流れ
キッチンカーで開業する場合の流れは、次の通りです。
2.資金を集める
3.保健所への事前相談
4.車両購入
5.車両整備
6.保健所のチェックを受ける
1.計画を立てる
どんなビジネスも、まずは計画を立てることから始めます。
成功が想像できないプランは、どんな達人でも成功に導くことは出来ません。
2.資金を集める
立てた計画から、必要資金を算出します。
開業にかかる費用は初期費用、ビジネスとして軌道に乗るまでに必要な費用は運転資金と考え、必ず確保しておきましょう。
自己資金だけで賄える人は構いませんが、融資を検討するのが一般的です。
融資を受ける際の審査でも、事業計画・自己資金は確認されますので、はじめから手を抜かずに進めていきましょう。
3.保健所への事前相談
キッチンカー営業では、営業予定地にある保健所で「営業許可」を取得する必要があります。
今日に明日、申請すればすぐもらえるものではないため、序盤で保健所に相談します。
4.車両購入
保健所に相談し、必要な設備を確認したら、いよいよキッチンカーを購入します。
キッチンカーの入手方法は、
- 新車を購入
- 中古車を購入
- レンタル
- はじめはリースで、最終的に買取り
の4つが考えられます。
はじめから必要な設備を搭載したものなら良いのですが、少なからず、改装・整備は必要となります。
初期費用を抑えたいなら新車購入以外の選択肢、長期的な視点で見れば新車購入…と、どこにポイントを持ってくるか、よく検討しましょう。
5.車両整備
保健所で示された基準を全てクリアできるよう、整備を行います。
セルフで行うことも可能ですが、専門業者に頼むと、仕上がりも美しく、工費等が補助金・助成金の対象となる場合もあります。
6.保健所のチェックを受ける
全ての整備が完了したら、保健所にてチェックしてもらいます。
ここで指摘された事項があれば、修正を加え、改めて申請することになります。
営業許可とは
キッチンカー営業に必要な「営業許可」は、事業を行うために必要な条件を満たしていることを証明してもらう事です。
飲食業は、一般市民の健康や公衆衛生に密接に関わるジャンルなので、色々な制限・項目をクリアしなくてはなりません。
営業許可が下りると「営業許可証」が交付されます。交付された営業許可証は、その後も色々な手続で必要になりますし、店舗(車内)に掲示する義務があります。
営業予定地の保健所で許可を受ける
営業許可の申請先は保健所ですが、どこの保健所でもいいわけではありません。
必ず営業・販売を行う地域を管轄する保健所に申請し、許可をもらいます。
2021年6月以前、営業許可要件は各都道府県保健所ごとに異なっていました。これが2023年現在では、統一されています。
…とはいうものの、今でも”ローカルルール”を設けている自治体は存在します。
地域ごとに設定される「条例」、その土地に昔からある「慣習」等に対応するための微調整だと考え、これから営業する地域へのご挨拶として、しっかり確認しましょう。
令和3年より前に取得した人は注意!
令和5年5月以降、新しく営業許可を取得する人には関係ありませんが、令和3年(2021年)5月以前に取得した人は、更新時期を確認しましょう。
以前は、同じ都道府県内であっても、地域別に複数の許可が必要なところがありました。
現在は、1つの営業許可で 同じ県内すべてのエリアで営業ができるようになっていますので、許可を取得した土地の保健所へ、確認してください。
飲食店に係る営業許可は32種類!
食品に係る営業許可の申請様式は全部で32種類です。
※2021年6月以前は都道府県により許可条件が異なっていましたが、2023年5月現在、統一されています。
このうち、キッチンカー営業では「飲食店営業」「菓子製造業」「喫茶店営業」の3つが主要でしたが、2021年6月1日から「飲食店営業」に一本化されています。
つまり、キッチンカー営業で必要な許可は「飲食店営業」です。
「飲食店営業」許可取得の要点
飲食店営業の要点は下記の通りです。
2.キッチンカーでの営業に必要なのは「飲食店営業許可」
3.営業許可の有効期限は5年間
手続の具体的な流れ
ここからは、必要な手続について説明します。大筋は次の通りです。
2.書類の作成・提出
3.施設検査
4.許可証交付
5.営業開始
1.保健所への事前相談
保健所への相談は「事前」に行います。具体的には、計画を策定し、キッチンカーを入手する前の段階です。
事前相談では、次のことを話します。
・販売エリア
・開業時期
詳細まで決める必要はありませんが、最低限、決めておきましょう。
例えば、クレープ等のスイーツを調理しながら売るのか、それとも、あらかじめ調理・梱包したお弁当等を売るのか。エリアは都道府県単位、開業時期は±半年程度まで絞れていれば、相談に応じてもらえるでしょう。
2.書類の作成・提出
相談時に示される書類等を、作成して提出します。
下記は、神奈川県の例です。
- 営業許可申請書
- 施設の図面
- 業務計画書
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの
- 法人番号 または 登記事項証明書(法人の場合)
- 水質検査成績書の写し(井戸水などを使用している場合のみ、採水後6ヶ月以内のもの)
- 製造方法の概要(製造業の場合)
- 申請手数料
この他、「車検証のコピー」「検便検査成績書」を求められる事もあります。
3.施設検査
施設とは、キッチンカーの設備をいいます。
事前相談で指導を受けた内装・設備工事が完了したら、自ら保健所に連絡をし、検査を受けます。
事前相談の際、受けた指示を遵守していれば、まず不合格になる事はありません。
下記は、一般的な指導内容です。
- 運転席と調理場が明確に区分されているか
- 給水・排水タンクの設置・容量
- シンクの数
- 水道(蛇口)設備
- 収納ケース、棚の設置数
- 石鹸等の衛生用品の管理
- 換気設備
- 冷蔵庫・冷凍庫の設置
- ゴミ箱の設置
工事完了後に補正指導を受けた場合、補正後に改めて申請することはできますが、時間・費用ともに大幅なロスは避けられません。
あらかじめ予定している開業時期・資金計画に沿うよう、事前相談はしっかりと行いましょう。
4.許可証交付・営業開始
申請内容、検査時に問題がない場合、2-3週間程度で「営業許可証」が交付されます。
交付された許可証は、キッチンカーで営業する際、必ず携帯しなくてはなりません。営業に関する手続きでも、都度、提示が求められる書類もあります。
なくさないのは勿論のこと、キッチンカーの見やすい位置に取り付けておきましょう。
営業開始後に必要な手続は?
許可証を受取り、営業を開始した後にも、手続が必要な場面があります。
これらを怠った場合、営業そのものを禁止されることもありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
変更届
既に受けている営業許可申請書の記載事項のうち、次のものに変更が生じると「届出」が必要です。
- 営業者の住所、氏名
- 営業所の名称
- 営業設備
- 食品衛生責任者 等
神奈川県の場合、変更後「速やかに」届出るよう指導がなされます。
「営業許可申請書(変更)」に「営業許可証」「変更事項を確認できる書類」を添付して提出しましょう。
キッチンカー営業に必要な許可・手続 まとめ
当ページでは、キッチンカー営業に必要な許可・手続を解説しました。
- 営業許可は、営業する地域の保健所で取得
- キッチンカー営業には「飲食店営業許可」が必要
- 営業許可の有効期限は5年間
当ページをご覧になり、自分で手続をするのは難しそうだと感じた方は、お近くの行政書士事務所までご相談ください。
事前相談から営業許可証の取得まで、あなたに代わって行政書士が行ってくれるものもあります。
また、全て任せるのはちょっと…という方は、必要なプロセスのみ手を貸してもらうこともできますよ。
当事務所でも承りますので、お問合せフォームよりお気軽にご相談ください。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。