
本記事では、行政書士の独占業務「著作権」関連業務についてお話しします。
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士業には独占業務がある
行政書士をはじめ、弁護士や税理士、司法書士などの「士業」には、それぞれ独占業務があります。
一般の方には士業の区別が難しいため、ざっくり示すと下記の通りです。
資格名 | 独占業務 |
---|---|
弁護士 | 裁判など争訟性のある事件で依頼人の代理ができる 裁判所へ提出する書類等の作成、その他全般 |
税理士 | 税務署に提出する書類の作成、提出等の代行 |
司法書士 | 会社(法人)や不動産に係る登記 |
行政書士 | 官公署提出書類の作成、提出などの代行 |
この記事を書いている榊原沙奈は「行政書士」なので、「官公署に提出する書類の作成が得意な人」と認識してもらえれば、ここでは十分です。
著作権って何?
「そもそも著作権って何?」という人もいるでしょうから、簡単に説明します。
著作権は、自分の著作物の使用に関し、独占的に支配して利益をうける権利のことです。
著作権法という法律で保護される知的財産権の1つで、原則、著作者の死後50年間は存続します。
つまり、自分が作ったモノは、自分の死後50年間は保護されるんですね。
特許権とは別
似ているモノに「特許権」や「商標権」があります。
これらは、知的財産権という同じ括りにあるのでわかりづらいのですが、著作権とは大きく異なる点があります。
発生のきっかけです。
著作権は、著作物を創作すれば自動的に生まれる権利ですが、特許権などは自分で申請をして「登録」を受ける事で発生します。
この申請等をできるのは弁理士という専門家で、行政書士ではありません。
著作権関係業務とは?
では、行政書士ができる著作権関連業務とは何なのでしょうか。
答えは下記の通りです。
- 著作権の登録申請
- 著作権・著作隣接権の移転登録申請
- プログラム著作物の登録申請
- 登録原簿・謄本・閲覧申請
- 著作権者不明等の裁定申請
- 著作権管理事業者登録申請
- 利用や譲渡に係る契約書作成
これだけでは内容がわからないと思いますので、1つずつ見ていきましょう。
著作権の登録申請
「自動で発生するんじゃないの?」と思われる方もいるでしょう。
著作権は、著作物を創作すると自動で発生すると説明しました。これは間違いありません。
しかし、別の人同士が偶然同じモノを創作した場合や、酷似したモノを創作した場合。
双方が自身の著作権を、何の証拠もなく主張し続けても埒が明かないのです。
そこで著作権には「登録」という制度が設けられています。
この登録を受けるためには、申請が必要です。
著作権・著作隣接権の移転登録
著作権・著作隣接権の移転登録とは、もともと著作権や著作隣接権をもっていた人から権利が移転された場合、これを文化庁に申請して登録を受けることをいいます。
著作権は権利なので、有償無償に関係なく人に譲ることができます。
もしも1つの著作権を二重に譲渡してしまった場合、先に移転登録を受けておくことで、契約の先後にかかわらず相手に対抗できます。
この登録を受けるために申請が必要です。
プログラム著作物の登録申請
著作権が保護する著作物に「プログラム著作物」というモノがあります。
創作したプログラムそのものを著作物として保護するのですが、この登録にも一定の手続が必要です。
登録原簿・謄本・閲覧申請
著作権登録がされると、文化庁の「著作権等登録原簿」に記載されます。
この中には
この著作物の著作権が、○年○月○日にAからBに譲渡された
この著作物は○年○月○日に匿名で公表されたが、その著作者の本名は○○○○である
といった事実が書かれています。
こうした記載内容を確認するために、一定の手数料を支払って「登記事項記載書類」等を請求できるのですが、申請が必要となります。
著作権者不明等の裁定申請
他人の著作物を適法に利用する場合、まずは著作権者に「使っても良いですか」とおうかがいを立てます。
しかし、いくら探しても相手が見つからない事もあります。
このような場合、権利者の許諾を受ける代わりに活用するのが、文化庁長官の「裁定」です。
著作権管理事業者登録申請
作詞家、作曲家などの個人、音楽出版社や法人から委託を受け、音楽関連の著作権を管理する団体を「著作権管理事業者」といいます。
事業者が著作物について、使用料の金額を決定するなどの管理を事業として行う場合、文化庁への登録が必要になります。
利用や譲渡に係る契約書作成
他人の著作物を利用する場合、使用料の金額等を契約書面にする事が考えられます。
契約の公正性を保つために、また、契約後に発生するトラブル防止のために、第三者として行政書士が関わる事もあります。
まとめ
行政書士の独占業務の1つ、「著作権」関連業務について見てきました。
- 著作権の登録申請
- 著作権・著作隣接権の移転登録申請
- プログラム著作物の登録申請
- 登録原簿・謄本・閲覧申請
- 著作権者不明等の裁定申請
- 著作権管理事業者登録申請
- 利用や譲渡に係る契約書作成
文化の発展・振興は経済活動の活性化にも繋がります。
本記事が、あなたの創作活動促進のお役に立てば幸いです。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。
当事務所代表の榊原は、著作権相談員でもあります。
ご自身の創作物保護や誰かに譲りたい場合、使いたい著作物があるけれど相手がわからない!といった時にはぜひ、ご相談ください。