
本記事では、ドラッグストア開業に必要な手続を解説します。
Contents
「薬局」と「ドラッグストア」の違いは?
はじめに、ドラッグストアと薬局を混同している方が多いので、それぞれの違いをお話します。
処方箋を取り扱うのは保険薬局
医療機関を受診し、処方箋をもらった時に訪れるのは「保険薬局」です。
この場合、店舗管理者として薬剤師を配置しなくてはなりません。
一方、市販薬など医薬品の販売のみを行い、調剤業務をしない場合の店舗管理者は、薬剤師に限らず、登録販売者でも構いません。
「薬剤師」と「登録販売者」の違いは?
一般的な医薬品は「要指導医薬品」から「第3類」という5区分のいずれかに分類されます。
分類の基準は「薬効」と「副作用のリスク」です。
市販される医薬品は第1類から第3類までがほとんどで、要指導医薬品、第1類医薬品は薬剤師でなければ販売できません。
いっぽう、第2類・指定第2類医薬品、第3類医薬品は薬剤師だけでなく、登録販売者でも販売可能です。
つまり、開業したいドラッグストアがどの医薬品を取り扱うかで、必要な手続と配置すべき人が変わるのです。
調剤薬局を開業するには?
調剤薬局の開業に薬剤師の資格は要りません。
ただし、店舗管理者として薬剤師を配置する必要があります。
必要な許可・指定は下記の通りです。
- 薬局開設許可
- 保険薬局指定
- 調剤室の設置
「薬局開設」許可取得までの流れ
まずは、薬局開設許可取得までの流れです。
- 事前相談
- 申請書類の作成・準備
- 申請書提出
- 現地審査
- 開設許可証交付
- 保健医療機関指定申請書提出
- 保健医療機関認定
事前相談
まずは、自身が開業したい場所を管轄する「保健所」と「厚生局」を調べます。
保健所の管轄区域案内はこちらから。(神奈川県の場合、こちらから。)
地方厚生(支)局の所在地はこちらから。(神奈川県の場合はこちら。)
あくまでも、開業予定地を管轄する保健所・厚生支局が窓口になりますので、間違えないようにしましょう。
確認ができたら、直接窓口へ赴くか、電話にて、担当者と打合せをします。
開業予定日があらかじめ決まっているのなら、この段階で伝えて予定を組みます。
必要書類等の確認も併せて行います。
申請書類の作成・準備
まずは、保健所へ薬局の開設許可申請をします。
神奈川県の場合、下記の書類を求められます。
- 薬局開設許可申請書 様式1(PDF・Word)
- 薬局の管理者及びその他の薬剤師・登録販売者の一覧表 別紙1(PDF・Word)
※資格確認のため薬剤師免許証(原本)・登録販売者従事登録証(原本)を提示 - 薬局の業務の概要 別紙2(PDF・Word)
- 薬局の構造設備の概要 別紙3(PDF・Word)
- 業務体制の概要 別紙4(PDF・Word)
- 薬局の平面図
(別紙3に記載するか、設計図面等の添付)
※ショッピングモール等店舗内に開設する場合は、薬局の位置がわかる施設全体図面を含む - 法人の場合は登記事項証明書
- 薬局の管理者及びその他の薬剤師・登録販売者の雇用契約書の写し等使用関係を証する書類
雇用証明書の例示(PDF・Word) - 健康サポート薬局の基準に適合することを確認できる文章及び書類
※健康サポート薬局である旨の表示を行う場合のみ - 薬剤師不在時間の概要 別紙5(PDF・Word)
※薬剤師不在時間がある場合のみ
※申請者(法人の場合、薬事に関する業務に責任を有する役員)が精神の機能障害により、業務を適正に行うにあたり、必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができないおそれがある場合には、医師の診断書添付を求められます。診断書の例示(PDF・Word)
※各都道府県保健所により様式が異なるので、必ず担当区域の保健所HPよりダウンロードするか、担当者から直接もらうようにしてください。
手数料は、29,100円です。
申請書提出
提出期限の目安は、開業日の前月20日頃です。
開業予定日を明確に定めている場合、間に合う日程を必ず確認しましょう。
現地審査
担当者より事前に通達があり、現地審査が行われます。
施設に関する審査基準はこちらからご確認いただけます。
各保健所によりサイズや必要数など異なる場合がありますので、前もって確認しておきましょう。
備品類
- 液量器
- 温度計(100度)
- 水浴
- 調剤台
- 軟鋼板
- 乳鉢(散剤用のもの)及び 乳棒
- はかり(感量10ミリグラムのもの 及び 感量100ミリグラムのもの)
- ビーカー
- ふるい器
- へら(金属製のもの 及び 角製 又は これに類するもの)
- メスピペット
- メスフラスコ 又は メスシリンダー
- 薬匙(金属製のもの 及び 角製 又は これに類するもの)
- ロート
- 調剤に必要な書籍(磁気ディスクをもって調剤するものを含む。)
はかりですが、2種類の感量のものを必ず用意しておく必要はなく、デュアルレンジ型電子天秤のように切り替え可能なものを1台置いておく事で足ります。
書籍等
その他、下記の書類も必要です。
- 日本薬局方及びその解説に関するもの
- 薬事関係法規に関するもの
- 調剤技術に関するもの
- 当該薬局で取扱う医薬品の添付文書に関するもの
解説書には「日本薬局方解説書」や「日本薬局方条文と注釈」など
薬事関係法規に関するものとして「薬事衛生六法」「衛生行政六法」など
調剤技術に関するものは「調剤指針」
医薬品の添付文書に関するものは、取扱う医薬品の添付文書をファイルすることでも差し支えないとされていますが、実務上、PDFファイルなどで保存したモノにすぐアクセスできれば問題ありません。
その他
「業務手順書」「薬局の管理 及び 運営に関する事項」「要指導医薬品 及び 一般用医薬品の販売制度」などを備えておく事を求められる場合があります。
開設許可証交付
実地調査完了から1~2週間ほどで許可証が交付されます。
開業予定日1か月前には許可を受けられるのが理想です。
保健医療機関指定申請書提出
ここからは厚生局への提出書類です。
開業予定日の前月10日頃までには申請書を提出しないと、翌月1日からの指定を受けることができません。必ず事前にスケジュールを確認しましょう。
関東信越厚生局の場合、提出書類は下記の通りです。
- 保健医療機関・保険薬局指定申請書(様式11)(Word・PDF)
- 薬局開設許可証の写し(※保健所の受付印があるもの)
- 保険薬剤師(※管理薬剤師を除く。)の氏名 及び 保険薬剤師の登録の記号番号
- 上記2.以外の薬剤師のそれぞれの数を記載した書類
- その他指定の適格性等を確認するために必要な書類(指定後に予定している開局日 及び 開局時間について、通常週の状況がわかるように記載すること。)
- 法人登記簿謄本の写し(※法人の場合のみ)
- 土地建物登記簿謄本 又は 賃貸借契約書の写し
- 周辺図(※近隣の医療機関の位置が分かるように記載すること。)
- 平面図
注1)敷地内にある全ての建物が分かるように記載すること。(※薬局の置かれる建物は分かるようにしておくこと。)
注2)敷地内の建物に医療機関が存在する場合(予定を含む。)は、その旨を記載すること。
注3)薬局の出入口が公道又はこれに準ずる道路と面しているか確認できるよう記載すること。 - 同一建物内のテナント名が分かる書類(※雑居ビル等に薬局を開設する場合のみ)
- 保険薬局の新規指定 及び 指定更新に係る確認書類(Word・PDF)
- 社会保険 及び 労働保険への加入状況にかかる確認票(Word・PDF)
上記のほかにも添付書類を求められる場合もありますので、柔軟な対応を心がけましょう。
保健医療機関認定
その月の10日頃までに受けた指定申請は、25日頃に審査会にて審議されます。
ここで問題がなければ、翌月1日付で保険薬局の指定を受けられます。
ドラッグストア開業に必要な申請は?
ここまで調剤薬局を設置する場合に必要な許可・指定を見てきました。
「いや、うちは調剤業務は不要だよ。」という方は、下記の許可取得が考えられます。
- 店舗販売業許可
その他、取り扱う商品により、下記の免許等が必要です。
- 一般酒類小売業免許
- たばこ小売販売業
- 食品等販売業
店舗営業許可
ドラッグストアの開設には、店舗販売業許可を取得する必要があります。
提出先はドラッグストアを開設する場所を管轄する保健所ですので、あらかじめ確認しましょう。
保健所の管轄区域案内はこちらから。(神奈川県の場合、こちらから。)
必要な書類は?
必要な書類は下記の通りです。
- 店舗販売業許可申請書 様式76(PDF・Word)
- 店舗の管理者及びその他の薬剤師・登録販売者の一覧表 別紙1(PDF・Word)
※資格確認のため薬剤師免許証(原本)・登録販売者従事登録証(原本)を提示 - 店舗の業務の概要 別紙2(PDF・Word)
- 店舗の構造設備の概要 別紙3(PDF・Word)
- 業務体制の概要 別紙4(PDF・Word)
- 店舗の平面図
(別紙3に記載するか、設計図面等の添付)
※ショッピングモール等店舗内に開設する場合は、店舗の位置がわかる施設全体図面を含む - 法人の場合は登記事項証明書
- 店舗管理者及びその他の薬剤師・登録販売者の雇用契約書写し等使用関係を証する書類
雇用証明書の例示(PDF・Word) - 管理者の設置が必要な管理医療機器(「特定管理医療機器」という。)を取り扱う場合は管理者が施行規則第175条第1項各号の要件を満たすことを証する書類 ⇒(注)※Dへ
この場合、申請書の備考欄に管理者の氏名、住所を記載してください。
※店舗管理者を薬剤師以外の者とする場合に必要です。
※管理医療機器の販売等を行わない場合又は管理者の設置が不要な管理医療機器のみを取り扱う場合、この書類は不要です。 - 第一類医薬品を販売授与する店舗において登録販売者を管理者とする場合は、その者の業務経験の証明に関する書類
業務経験証明書の例示(PDF・Word)
申請手数料は、29,100円です。
店舗管理者になれるのは…
ドラッグストアの開業において、店舗管理者を置かなくてはなりません。
そして、この店舗管理者に指定できるのは、下記要件を満たす人です。
- 過去5年間のうち、薬局・店舗販売業 又は 配置販売業(以下「店舗販売業等」という。)において、一般従事者として薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下に実務に従事した期間並びに登録販売者として業務(店舗管理者等としての業務を含む。)に従事した期間(以下「従事期間」という。)の合計が2年以上である者
- 従事期間が通算して2年以上あり、かつ、過去に店舗管理者等として業務に従事した経験がある者
- 次の全てに該当する登録販売者であって、店舗販売業者等が店舗管理者等と同等の知識、経験等がある者として適当と認める者
何だかまどろっこしい文章ですが、まとめると「登録販売者は過去5年以内の実務経験が通算2年以上」必要だという事です。
実務経験を証明する書類として、下記のものが例示されています。
その他、必要な免許等
スーパー型のドラッグストアの場合、酒類やたばこを販売するところがほとんどです。
これらを取り扱う場合には、下記の手続が必要です。
一般酒類小売業免許
免許の申請先は、店舗設置場所を管轄する「税務署」です。
登録免許税は1申請につき、30,000円×販売場の数です。
一般酒類小売業免許について、こちらの記事で解説していますので、あわせてご覧下さい。
たばこ小売り販売業
たばこの小売り販売には「特定小売販売業」と「一般小売販売業」の2種類があり、営業所ごとに取得しなくてはなりません。
申請先は「財務局」で、登録免許税15,000円がかかります。
食料品等販売業
食料品等販売業は、お弁当や惣菜類、乳製品、その他調理済みの食品を販売する営業のことを指します。
調理が必要な飲食店は「食品衛生法」という法律に基づき、一定の営業許可が必要です。
しかし、食料品等販売業の営業許可は、都道府県条例が根拠規定とされているため、許可自体不要な都道府県もあります。
例として、「東京都食品製造業等取締条例」にて営業許可を要する東京都を挙げると、一定の審査と手数料13,200円が必要です。
まとめ
ドラッグストア開業に必要な手続を見てきました。
- ドラッグストアには薬剤師または登録販売者が必要
- 調剤業務をする場合には「薬局開設許可」「保険薬局指定」が必要
- タイムスケジュール、必要書類等には事前確認が不可欠
- 登録販売者には実務経験「通算2年以上」必要
- 取り扱う品物により、必要な免許等がある
事業内容により必要書類が違う事や、その種類も多いため、余裕をもったスケジュール管理が必要です。
手続等でお困りの際は、当事務所にご相談ください。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。