
本記事では、マイクロチップ義務化の目的や登録手続について解説します。
Contents
マイクロチップとは?
マイクロチップは、犬猫の固体識別に使う電子標識器具です。
サイズは直径2mm、長さ8~12mmでカプセルのような形状をしており、装着には太い注射針のようなものを使います。
15桁の数字が記載されていて、専用のリーダーを使用して読み取る事ができます。
埋め込む場所は首の後ろの「皮下」。
最も痛みが少ない箇所という事で、点滴やワクチン接種時に選ばれる場所でもあります。
マイクロチップ装着のメリット・デメリット
可愛いペットの体内に「異物」を入れる事に、抵抗を感じる方もいるでしょう。
では、どうしてマイクロチップを装着するのか?
その理由の答えを踏まえつつ、メリットとデメリットをご紹介します。
マイクロチップ装着のメリットは?
メリットは下記の通りです。
- 迷子の防止
- 飼育放棄や悪意の遺棄防止
- 連れ去り防止
迷子の防止
犬猫の殺処分に異を唱える人が一定数いるものの、殺処分に至る経緯を知る人は意外と少ないように思います。
保健所に連れ込まれる子は、みんながみんな、捨てられたわけではありません。
飼い主とはぐれ、預かり期限の間に迎えに来てもらえない事で処分に至るケースも少なくない事をご存知ですか?
核家族が進み、外へ散歩に連れて行かない子も増えています。
このような場合、慣れない外へ飛び出した犬猫本人はもちろん、近所の人も飼い主の身元がわかりません。
また、鑑札そのものを身につけていない子や、何かの拍子に外れてしまう事も考えられます。
マイクロチップの場合、体内に直接埋め込むため、外れるリスクが低い事がメリットだといえます。
それだけでなく、これまでは任意だったマイクロチップの装着が義務化される事で、迷子さんの身元確認が標準化され、飼い主の特定・連絡が迅速に行われるようになる事が期待されます。
飼育放棄や悪意の遺棄防止
迷惑な一目惚れや安易な個体購入により、虐待や遺棄が問題となっています。
売買目的で繁殖させた挙げ句、面倒を見切れず、劣悪な環境下で野放しにしているブリーダーが度々問題となる事も。
国はこのような事態を未然に防ぐために責任の所在を明確にし、手間やコストをかける制度を設けることで、注意喚起を促す目的を持っている事がうかがえる制度でもあります。
連れ去り防止
犬猫は民法上「動産」で、「モノ」です。
けれど、我々と同じ生き物であり、その命は尊いものでもあります。
動物たちを慈しむ心を持つ人達がいる一方で、彼らを「商品」としか考えられない人もいます。
転売が問題となっていますが、連れ去った動物を高値で売買する人もいるのです。
このような非道を許さないために、客観的な識別の実現は不可欠だといえます。
マイクロチップを装着する事で、言葉を話せないペットたちを識別する事ができ、また、安易に連れ去ろうとする考えそのものを抑止する効果が期待できます。
マイクロチップ装着にデメリットはないの?
メリットばかり語ってきましたが、デメリットもあります。
- 装着時に痛みを伴う
- 読み取りには専用リーダーが必要
装着時に痛みを伴う
マイクロチップの装着位置は、「皮下」です。
痛みの少ない箇所に直径2mmのマイクロチップを針で打ち込むため、通常の注射や点滴に用いる針よりも太い針を使う事になります。
切開や縫合などの外科的な処置を避け、痛みを極力抑えられる箇所を選んではいるものの、慣れない注射や道具を使われる事には、人間もペットも緊張しますよね。
我が子に痛い思いをさせたくない飼い主さんや、怖がりなペットにとっては、装着時の痛みや恐怖がデメリットだと言わざるを得ません。
飼い主だけでなく、ペットに寄り添ってくれる獣医師にお願いしましょう。
読み取りには専用リーダーが必要
マイクロチップには15桁の数字が記載されています。
これを読むには、専用のリーダーが必要です。
つまり、目視できない事がデメリットだと言えます。
現状でこのリーダーを備えている施設は、保健所や動物病院などに限られます。
装着が義務化されたことで、読み取る機会も増えるでしょうから、設置施設が増えていくことが期待されます。
どうして装着が義務化されたの?
動物の命を慈しむ心を持つ人がたくさんいる一方で、金儲けの道具としか考えられない人や、安易な考えから迎えたものの、面倒を見切れず捨ててしまう飼い主が度々問題となります。
最近では、販売目的で繁殖を繰り返したものの、思うように売れず、劣悪な環境下で犬猫と暮らす悪質なブリーダーが問題となりました。
また、面倒が見きれず捨てられた子を標的とした動物虐待も問題となっています。
無責任な人達に対し、国や行政ができるのは「指導」です。
法律で一定の罰則を定めてはいるものの、問題が露出しない限り、手の施しようがないのが現状です。
こうした現状を打開すべく、まずは責任の所在を明確化し、収益だけを目的とした軽率な販売行為を取り締まる事を。
次に、実際に遺棄した飼い主への直接的な指導を行える体制を整備して、責任を追及し、行き場のないペットを減らす事や再犯の防止に繋げる事を。
最終的に、路頭に迷い、殺処分されるペットゼロを実現を目的としているモノと考えられます。
飼い主は努力義務
今回、マイクロチップ装着が義務化されたのは動物取扱業者のみです。
飼い主はどうかというと「努力義務」にとどまります。
ですので、令和4年6月前に迎えた子たちが未装着だったとしても、必ず装着しなくてはならないわけではありません。
本記事を読んで、少しでも不安になった方はかかりつけ医に相談してみましょう。
「犬と猫のマイクロチップ情報登録」手続
装着したマイクロチップ情報は、環境省のデータベース内で管理されます。
ここに登録される「犬猫の名前」「生年月日」「飼い主情報」などをもとに、迷子さんや個体の識別を行うのです。
登録の流れ
ここからは登録の流れを見ていきます。
すでに装着している子は?
令和4年6月よりも前に装着した子は、民間のデータベースに情報登録されているはずです。
これらの子は、環境省のデータベースへの移行手続が必要です。
手続の詳細はこちらをご覧下さい。
これから装着する子は?
マイクロチップを装着した際、動物病院から「マイクロチップ装着証明書」が交付されます。
こちらに記載された情報をもとに、自分で登録する必要があります。
登録手続はこちらから行えます。
電子・郵送での申請が可能です。
これからお迎えする子は?
ペットショップやブリーダーから、令和4年6月1日以降に迎える子は、既にマイクロチップが装着されているはずです。
販売元であるショップまたはブリーダーが「登録証明書」の交付を受け、登録を行っているので、これらを引き継ぐ手続が必要です。
具体的には、既に登録された情報を「変更する手続」を行います。
こちらにアクセスして、「所有者の変更登録」を行いましょう。
このプロセスを怠ると、所有者がペットショップやブリーダーのままとなり、離れたペットを探す際に見つける事ができません。
つまり、マイクロチップの恩恵が受けられません。
まとめ
愛犬と過ごす時間はかけがえのないものですが、皆が皆、同じ考えを持っているわけではありません。
令和4年6月1日から義務化されたマイクロチップ装着制度の要点は、下記の通りです。
- 動物取扱業者は装着が義務
- それ以外の人は努力義務
- 既に装着済みの方はデータの移行手続が必要
- これから装着する人は登録手続が必要
- これから迎える人は登録変更手続が必要
「マイクロチップ装着義務化」との文字から、装着さえすればいいと勘違いする人もいるかもしれません。
しかし、本来の目的は装着後の登録制度による犬猫の身分証明です。
くれぐれも忘れずに登録を行いましょう。
本記事が新制度を理解する助けになれば幸いです。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。