
本記事では、合同会社の概要と設立手順について解説します。
合同会社のメリットは下記記事をご覧下さい。
Contents
合同会社って?
2006年5月、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルにした会社形態としてデビューしたのが合同会社です。
合名・合資会社と並ぶ「持分会社」と呼ばれる形態でもあります。
合同会社から株式会社に変更できる?
合同会社の特徴を簡単に説明すると、下記の2点です。
- ランニングコストの低さ
- 意思決定がスピーディ
個人事業からの法人成りや、初めての起業時に適した法人形態だといえます。
事業が軌道に乗ると、知名度の向上や更なる拡大を目指し、株式会社へ組織変更を行うケースもあります。
組織変更に必要な手続は?
組織変更に必要な手続は下記の通りです。
- 組織変更計画書の作成、社員全員の同意
- 組織変更の公告
- 株式会社の設立登記
- 組織変更の登記申請
- 税務署、市区町村、年金事務所等に変更届の提出
組織変更計画書の作成と全社員の同意
はじめに「組織変更計画」を立てます。
具体的な内容は次の通りです。
- 株式会社の目的
- 株式会社の商号
- 株式会社の所在地
- 株式会社の発行可能株式数
- その他、株式会社の定款で定める事項
- 役員(取締役・会計参与・監査役・会計監査人等)の選出
- 社員が取得する株式の種類や種類ごとの数
- 株式の割当てに関する事項
- 組織変更に際し、社員に金銭等を交付する場合はその内容
- 金銭の割当てをするなら、これに係る事項
- 効力の発生日 等
株式会社では、役員を設置するかどうか等が事細かく規定されています。
これらに気を付けながら、組織変更を行っていく事になります。
ここで作成した組織変更計画につき、計画内で定めた効力発生日の前日までに、総社員の同意を得ます。
同意を得られたら、「総社員の同意書」「組織変更計画書」「定款」をまとめておきましょう。
組織変更の公告
総社員の同意を得られたら、今度は外部へ知らせなければなりません。
通常、公告は官報に掲載して行います。内容は下記の通りです。
- 組織変更すること
- 債権者が一定期間内に異議を述べられること
一定期間とは、最低1か月です。
ここで異議を述べる債権者がいなければ、組織変更計画に定めた日に効力が発生します。
通常は設立当記事に効力が発生しますが、組織変更の場合は異なりますので注意が必要です。
官報への掲載方法等は、こちらからご確認いただけます。
合同会社を通してお世話になった方々へは、個別で連絡することも検討しましょう。
株式会社の設立登記
法務局へは、2種類の手続が必要です。
- 組織変更による株式会社の設立登記
- 組織変更による合同会社の解散登記
これらの手続は、自分達で行うこともできますが、専門家に頼む事で本業に集中する事ができます。
登記の専門家は司法書士ですので、依頼先をお探しの場合は検討してみましょう。
税務署や市町村等へ届出
登記が完了したら、忘れずにしておきたいのが諸官庁への届出です。
税務署 :異動届出書
都道府県税事務所:異動届出書、履歴事項全部証明書
市区町村 :異動届出書、履歴事項全部証明書
年金事務所 :健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届、履歴事項全部証明書
上記に挙げたのはごく一例です。
自社で必要な書類をきちんと把握し、所定の提出先へ早めに提出しましょう。
合同会社をオススメできる人
あくまでぼくの独断ですが、下記のような方には合同会社がオススメです。
- 小規模・少人数でやりたい
- 一般消費者向けのサービスを提供したい
小規模・少人数でやりたい
意思決定や利益分配等を含め、法人内部のルールや組織設計の自由度が高いため、他人にとやかく言われるのが嫌な個人事業主さんにオススメです。
出資額によらず、対等な発言権がゲットできるので、サイドビジネスとして共同経営等を考えている時にも使える法人形態です。
一般消費者向けのサービスを提供したい
相手が大手企業となると、合同会社は分が悪い場面もあります。(もちろん、ばっちり戦えるジャンルもありますよ?)
株式会社と比較すれば、資金調達の幅が狭く、知名度の上昇線も緩やかに推移するのが合同会社ですから、取引先が尻込みする事もあり得ます。
しかし、相手が一般の人ならどうでしょう。
飲食店や小売業の場合、顧客はエンドユーザーとなります。
法人形態を気にしながら買い物をするお客さん、少ないと思いませんか?
そう考えると、個人事業からの法人化や、ヘアサロン、ペットショップ、飲食店、介護業界等との相性が抜群な法人形態だといえます。
合同会社の資金調達は?
先にチラリと触れましたが、合同会社は、株式会社と比較した時に資金調達の方法が限定的という側面があります。
が、出来ないわけではありません。不安になった方は下記をしっかり確認してください。
合同会社の資金調達方法
代表的なのは、下記の3つです。
- 少人数私募債
- 日本政策金融公庫
- 補助金・助成金
少人数私募債
聞き慣れないワードだと思いますが、私募債は社債の1つです。
特定の投資家に対して発行する社債で、発行条件は2つ。
- 親族、従業員、取引先などを対象に49人以下まで
- 発行総額が社債の一口額面の50倍未満
期限や利息、発行額が自由に設定できる一方で、返済方法は「償還日一括返済」しか認められません。
ですので、ある程度の返済見込みがなければ発行できない社債だといえます。
発行するかどうかを決める際は、代表社員 または 業務執行社員の意思によります。
日本政策金融公庫
起業家の強い味方、日本政策金融公庫です。
スタート時は手元に現金を残しておきたい方も多いでしょうから、気になるのは利率ではないでしょうか。
民間の金融機関だと融資を受けられない場合もありますが、日本政策金融公庫は門戸が広く、利率もかなり低く設定されています。
新創業融資制度|日本政策金融公庫 www.jfc.go.jp
補助金・助成金
社債や融資が怖い人は、国や自治体が設定する補助金・助成金制度の利用が考えられます。
注意点として、補助対象となる事業や経費、期間が細かく設定されているモノもあったり、高額なものだと競争率が高く、必ず受けられる保証はありません。
また、対象事業の完了後に、一定期間内の報告義務等もあります。
各制度ごとに「目的」「要件」「補助率」「期限」「使途制限」が異なるので、必ず確認するようにしましょう。
合同会社設立の流れ
ここまで合同会社のメリットや株式会社への組織変更について見てきました。
合同会社を作りたくなった方は、ここからが本題です。
合同会社設立の流れは、下記の通りです。
- 設立項目の決定
- 必要書類を揃える
- 法務局に必要書類を提出、登記
- 設立後の手続き
設立項目の決定
まずは設立時に必要な事項を決定します。
- 商号
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 社員構成
- 事業年度
これらは登記事項ですので、必ず定めなければなりません。
必要書類を揃える
次に、設立に必要な書類を揃えます。
- 定款(電子定款の場合、CD-RやDVD-R)
- 印鑑届書
- 社員の印鑑登録証明書
- 払込証明書
- 本店所在地決定書
- 代表社員就任承諾書
- 登記用紙と同一の用紙
- 収入印紙
- 合同会社設立登記申請書
合同会社は自由度が高いぶん、これだけ揃えれば十分!とは言い切れないのですが(苦笑)
ご自身で設立をお考えの場合、相談窓口は、本店所在地を管轄する法務局です。
専門家へ依頼を検討される場合、司法書士、行政書士へご相談ください。
無論、当事務所でも承っています。(お待ちしています。)
法務局へ提出・登記
株式会社の設立手順をご存知の方は驚くかもしれませんが、合同会社は定款の認証が不要です。
とはいえ、公証人にチェックしてほしい人は受付けてもらえるかと思いますので、お近くの公証役場にご相談くださいね。
準備した書類を提出する際は、綴じる順番が決まっています。
- 「登記申請書」「収入印紙貼付台紙」
- 「払込証明書」「通帳コピー」
これらをまとめたら、下記の順番に重ねていきます。
- 登記申請書
- 本店所在地決定書
- 代表社員の就任承諾書
- 代表社員の印鑑証明書
- 払込証明書
重ねたモノは、左側をホッチキスで綴じましょう。
必要書類が揃ったら、いよいよ提出です。
提出先はどこ?
本店の所在地を管轄する法務局です。
書類に不備がなければ、登記申請日が会社設立日となります。
ご希望の設立日がある場合は、当日に提出できるよう準備を進めましょう。
郵送での提出も可能
わざわざ窓口へ持ち込まなくとも、郵送でも受付けてくれます。
日付指定で郵送すれば、希望する設立日に届きます。ご多忙な方は検討してみて下さいね。
ちなみに。
法務局には「不動産登記管轄区域」と「商業・法人登記管轄区域」と2つのエリアが設定されています。
少々ややこしいのですが、法人登記は後者の「商業・法人登記管轄区域」という方を確認して、郵送先を間違えないようにしてください。
会社設立後の手続きは?
設立が完了すると、次の場所に書類を提出します。
- 税務署
- 地方自治体
- 年金事務所
税務署
設立から2か月以内に、下記の書類を提出します。
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書
地方自治体
こちらも設立登記から2か月以内です。
- 定款の写し
- 登記事項証明書
本店所在地のある都道府県、市区町村で地方税の手続をするために必要となります。
年金事務所
場合により、社会保険や労働保険の手続が異なります。
管轄の年金事務所または社会保険労務士までご相談ください。
まとめ
今回は、合同会社の設立方法と、合同会社から株式会社への組織変更に必要な手続を解説しました。
合同会社の設立には、下記の手続が必要です。
- 設立項目の決定
- 必要書類を揃える
- 法務局に必要書類を提出、登記
- 設立後の手続き
合同会社から株式会社への組織変更には、下記の手続が必要です。
- 組織変更計画書の作成、社員全員の同意
- 組織変更の公告
- 株式会社の設立登記
- 組織変更の登記申請
- 税務署、市区町村、年金事務所等に変更届の提出
自分の将来を考えたとき、何が必要で、どんな制度を使っていこうか悩んだら、専門家へご相談下さい。
当事務所では、法人設立はもちろん、新事業に必要な許認可の取得をお手伝いしています。
本記事が、スタートアップの参考になれば幸いです。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。