
商標権、商標権とは聞くものの、それが一体何の事を指しているのかまで理解している人は少ないようです。
私も、実際に登録するまでよく存じ上げませんでした😅
というわけで、本記事では「商標権」の基礎からわかりやすく解説します。
Contents
商標権とは?
商標権は、他人(他社)と自社の商品・サービスを区別するために、自社商品やサービス提供時に使用する商標を独占できる権利の事です。
例えば…
牛丼で有名な吉野家さんは、看板、店内、提供容器等に表記しているロゴを商標として「商標登録」しています。
商標権は、この「設定登録」を経ることで発生する権利でもあります。
商標登録したロゴを使用する権利は、吉野家ホールディングスが保有しています。
第三者が吉野家のロゴを使用したい!という場合には、商標権者である吉野家ホールディングスに許可を得る必要があります。
吉野家ロゴ・マーク使用ガイドライン
商標権の有効期間は?
商標権は「設定登録」を経て、権利が発生します。
独占する権利の維持は、登録者の判断に委ねられていて、有効期間は登録日から10年間です。
商標権の仲間に「特許権」「意匠権」などがありますが、更新制度があるのは現在、商標権のみとなっています。
他社とダブらないように
自社で新しいロゴを検討する場合、他社と重複しないよう、事前調査が欠かせません。
調査には、J-PlatPatなどの知的財産専門サイトを利用しましょう。
他社の商標権を本当に知らなかったとしても、「先駆者の存在に気づかなかった」は言い訳に過ぎず、先方から損害賠償請求・不当利得返還請求をされる可能性もあります。
商標登録制度の目的は?
次の通りです。
(2)事業の継続
(1)ブランド保護
ロゴなどの商標は、自社が提供する商品・サービスの象徴です。
特定ジャンルの棚の前で、所狭しと並ぶ類似商品の中、見慣れたロゴを見つけた時の安堵感は尋常ではありません。
きっと、私だけではないはず😭
1度も見たこともない製品より、使い慣れ、または何度も見た事のある製品を選びたくなるのは、人間の防衛本能の成せる技だと思います。
こうした信用を保護するのが、商標権の大事な目的なのです。
同時に、正当な権利を持つ商標権者がいるにも関わらず、その商標を悪用し、イメージ低下・粗悪品の流用をする不健全な事業者を廃除し、こうした事態を未然に防ぐ目的もあります。
(2)事業の継続
他社が利用していることを知りながら、特定の商標を先に登録された場合を考えてみましょう。
商標権は、原則「先願主義」を採用しています。
先願主義は、先に出願した人を優先することをいいます。
商標権は、特定の商標を独占できる権利ですから、実際に使用する気はない後出し企業が先に登録し、差止請求をされる事も考えられます。
現に、使用者が商標登録をしていない事に目をつけた事業者が先に登録してしまい、使用差止・ライセンス料の支払いを迫るケースもありました。
このような訴えが全て認められてしまうと、登録者名簿には悪徳業者ばかり名を連ねることになります。
地獄のような展開ですが、ありえない話ではありません。
こうした事態を防ぐために、「有名商標」「普通名称」等の一定商標については、例外措置が設けられています。
この制度は「健全な事業者の事業継続」を保護・応援する目的があるのです。
何が侵害行為になるの?
CHANELやGUCCIなど、「誰もが聞いた事のある商標」なら、無断・不正利用は一目でわかるかもしれません。
いっぽう、駆け出しの事業者の場合はどうでしょうか。
逐一調べたりしないですよね
(´・ω・`)
一般に、次の行為は侵害行為に該当します。
権利者でない者が登録商標を無断で使用し、登録されている商品・サービスを提供する行為。
要は、他人の商標が商標登録されているかどうかも考えず、同様のサービスに無断使用すれば、一発アウトです。
ちょっと変えればバレない?
そのまま使うとまずい事はお猿さんでも分かるでしょう。
しかし、ずる賢い人はこのように考えるかも知れません。
この点、商標権制度では「紛らわしい商標の使用までNG」の姿勢をとっています。
紛らわしい使用の具体例
私の登録商標「ヲタク行政書士®」について、同業者が私に無断で「オタク行政書士」と表記して使用した場合を考えてみましょう。
間違い探しのような差だけど…
商標権の登録対象となるのは、名前だけではありません。
名前に紐付く自社商品・サービスまで対象となります。
そのため、私の登録商標を少しイジった上で、同様のサービス提供でこれを使用した場合までも罰則対象になるのです。
「ヲタッキー行政書士」とか「ヲタ行政書士」と名乗った上で、私が登録している行政書士業務、講師業、ネットでの発信活動等々を行えば、侵害行為に該当します。
侵害したらどうなるの?
商標権を侵害した場合、次の2種類の請求が考えられます。
(2)刑事
(1)民事
民事では、商標権者自身が自分の権利を守る目的で次の請求手続きをとります。
(2)損害賠償請求・不当利得返還請求
(1)差止請求は、
使用の差し止め、または不正使用の未然防止を目的とした行為を請求が可能です。
(2)損害賠償請求・不当利得返還請求では、
加害行為により発生した損害を賠償すること、または、不正にゲットした利益分を被害者に返還することを請求することができます。
ただし、双方を併用することはできず、いずれかを選ぶ事になります。
(2)刑事
刑事上の手続きは、「法律を違反した事」に対して、法律に基づいた罰を与える目的で行うものです。
商標法に規定される制裁は次の通りです。
(2)罰金
商標法違反は親告罪ではないため、検察官が独自に訴追することができます。
しかし、いくら訴追できるといっても、違反の事実を知らなくては動きようもありません。
一刻もはやい対処を望むなら、被害者自ら告訴状を提出するのが最適解でしょう。
違反者が法人の従事者等であれば、違反者本人だけでなく、法人にも3億円以下の罰金が課される場合があります。
経営者の皆さんは、従業者の行為にまで責任を持たなくてはなりません。
侵害にならない場合もある
すべての無断使用が侵害に該当するかというと、そうではありません。
次の場合には「セーフ」とされることもあります。
(2)使用ジャンルが全く異なる場合
(1)個人使用にとどまる場合
他者の目に触れることなく、あくまでも個人使用に限定される場合には、該当商品・サービスに悪影響を及ぼす心配がなく、侵害うんぬんの問題になる事はありません。
「個人使用」を前提とした販売、提供は、言うまでもなくアウトです。
(2)使用ジャンルが全く異なる場合
商標権侵害を主張するには、第三者の無断使用のほか、指定商品・指定役務についての使用が要件となります。
不正利用されたとはいえ、その使用先や目的が自社商品・サービスを提供するジャンルとはかけ離れていたり、単に”飾り”程度の使用となると、侵害とジャッジするのは厳しくなります。
まとめ
今回は、商標権の基礎知識として、目的や侵害行為に該当する場面、罰則規定を解説しました。
本記事が、自社での取得検討や、他社の侵害行為への対策を講ずる際の一助となれば幸いです。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。
こぼれ話
本文中で少しお話しましたが、私自身「ヲタク行政書士®」で商標登録をしています。

※他にも2区分登録済みです。
商標登録をしているかどうか見分けるポイントの1つに、「®」←このマークが付いていることが挙げられます。
®マークは「登録商標記号」
™マークは「商標記号」
登録商標記号は
正式に登録されており、他社や他人がその商標を無断使用することを法的に禁止していることを示します。
商標記号は
商標が登録されていない場合でも、その商標を主張するために使用します。
登録前(出願中も含みます!)の商標でも、商標は主張できるのです^^
もしも®マークまたは™マークのついたワードを見つけた際は、安易に使用・転用しないように気を付けましょうね。
ちなみに、筆者さかきばらは知的財産管理技能士でもあります。
知的財産管理技能士は、知的財産に関する知識を持っていることを証明する国家資格です🌸
知的財産に関わる軽度のお悩みなら、当事務所でも承ることができますので、お気軽にご相談ください。
商標権の出願や登録、不正使用に対する告訴、各種請求に関するお悩みは、弁理士または弁護士までご相談いただくとスムーズな解決が目指せるかと思います。