
本記事では、農地を農地以外の用途に変更するために必要な農地法5条許可について、わかりやすく解説します。
Contents
農地法5条許可とは?
農地法5条許可とは、農地法第5条に規定される許可のことを指します。
簡単にいうと「農地を農地以外の用途に転用し、別の目的で利用する場合には許可権者の許可を受けないとダメだよ」という内容の条文です。
対象になる土地は?
5条許可の対象は、現況が農地または採草放牧地の土地です。
登記上は「農地」でも、現況が異なれば対象外です。
反対にいえば、地目が別の土地だったとしても現況が農地なら許可が必要となります。
農地・採草放牧地の定義は?
農地は、耕作の目的に供される土地をいいます。
採草放牧地は、農地以外の土地で、主に耕作または養畜事業のための採草や家畜の放牧の目的に供される土地のことをいいます。
対象となる取引は?
下記に、5条許可が必要な取引を紹介します。
✓ 贈与
✓ 賃借
✓ 競売や公売
✓ 共有物の分割
✓ 譲渡担保、買戻し
✓ 特定遺贈
相続や時効による取得の場合、4条許可の対象になります。
農地法4条許可について詳しく解説していますので、こちらの記事もあわせてご覧ください。
許可が必要なケースは?
売買などの取引に伴い、農地から宅地、工業用地に転用する場合、都道府県知事または指定市町村長の許可が必要です。
許可が不要なケースもある?
国、都道府県または指定市町村が主体となって転用する場合、5条許可は不要となります。
また、採草放牧地を農地に変更するための権利移転の場合、農地法第5条の適用外となります。
届出が必要なケース
転用したい農地が市街化区域外にある場合は許可が必要です。
いっぽう、農地が市街化区域内にある場合、5条許可は不要です。
ただし、届出が必要となります。
農地法5条許可に必要な要件は?
農地法は、優良な農地を確保することで、農作の安定をはかることを目的としています。
そのため、農業上の利用に支障が生じる恐れがある土地の場合には不許可となります。
自治体により詳細は異なりますが、ここでは横浜市の例をご紹介します。
立地
対象の農地を、営農条件や周辺の土地状況から区分し、これに応じて審査します。
区分 | 状況 | 許可の方針 |
---|---|---|
農用地区域内農地 (青地) | 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 | 原則不許可 農業用施設等市町村が定める農用地利用計画において指定された用途のために転用する場合は例外的に許可 |
甲種農地 | 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地 | 原則不許可 土地収用法の認定を受け、告示を行った事業等のために転用する場合は例外的に許可 |
第1種農地 | 10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 | 原則不許可 土地収用法対象事業等のために転用する場合は例外的に許可 |
第2種農地 | 鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 | 農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場合等に許可 |
第3種農地 | 鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 | 原則許可 |
一般基準
農地転用の確実性や、周囲の農地への被害防除措置の妥当性などを審査するための要件です。
転用事業の確実性 | ・資力及び信用があると認められること ・転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意があること ・遅滞なく転用目的に供すると認められること ・行政庁の免許、許可、認可等の処分の見込みがあること ・農地と併せて使用する土地がある場合、利用する見込みがあること ・農地転用面積が転用目的からみて、適正と認められること ・申請者(農地所有者や転用者)に農地法上の違反がないこと 等 |
被害防除 | ・土砂の流出、崩壊等、災害を発生させる恐れがないこと ・農業用排水施設の有する機能に、支障を生ずる恐れがないこと ・周辺農地の営農に、支障を生ずる恐れがないこと 等 一時転用 ・事業終了後、その土地が耕作の目的に供されることが確実と認めらえること 等 |
一時転用 | ・事業終了後、その土地が耕作の目的に供されることが確実と認め られること 等 |
このほか、建築基準法、土地計画法など、他の法律による規制を受ける場合もあります。
不動産は取引額も高額になりますから、事前にしっかり確認・調査を実施しましょう。
農地法5条許可申請の流れは?
一般的な流れは下記の通りです。
- 事前相談
- 現地調査
- 申請書作成・内容確認
- 申請書類提出
- 審査
- 許可証発行
- 着工~完了
- 現地確認
- 工事完了報告書の提出
農地法5条許可申請に必要な書類は?
自治体により差異がありますが、下記に横浜市の例をご紹介します。
農地法第4条、第5条許可申請 提出書類
(正・副計2部を提出してください。)
正本 副本
- 申請書
- 委任状(申請者以外が申請書類を提出する場合、申請者全員からの委任が必要)
- 土地の登記事項証明書(全部事項証明書)(申請日前3カ月以内のもの)
- 住民票(申請日前3カ月以内のもの)
※マイナンバー及び本籍地が記載されていないもの
※土地所有者の住所・氏名が土地登記事項証明書と異なる場合は、住所移転や氏名変更の経過が確認できる書類が必要です(住居表示変更証明、戸籍の附票、不在住証明書等) - 【申請者又は借受予定者が法人の場合】法人の登記事項証明書(全部事項証明書又は現在事項証明書)(申請日前3カ月以内のもの)
- 【申請者が法人の場合】定款又は寄付行為
- 【申請者又は借受予定者が個人の場合】個人事業主として経営を行っていることを証明する書類
- 公図(申請地及び事業予定地を赤等で明示)(申請日前3カ月以内のもの)
※原本還付可 - 【筆の一部の場合】測量図(全体の中で転用する部分が特定できるよう赤等で明示)
※分筆登記申請に添付する測量図と同程度のもの
※5条(所有権移転)で、筆の一部転用は不可(分筆登記後に申請してください) - 申請地を示した位置図(1/10,000 程度)
- 申請地を示した案内図(1/2,500 程度)
- 転用理由書 ※譲受人のみ
- 誓約書(理由書と一枚にまとめても可) ※譲受人のみ
- 事業計画書 ※譲受人及び借受予定者
- 土地利用計画図・被害防除図(排水、土留め、造成、光など)
- 現況写真
- 工事見積書(申請日前1カ月以内に発行されたもの又は申請時点で見積書有効期限が有効なもの)
- 残高証明書・融資証明書(申請日前1カ月以内のもの)
- 【資金提供が譲受人以外の場合】同意書+融資者の残高証明書・融資証明書(申請日前1カ月以内のもの)
まとめ
本記事では、「農転」のうち5条許可について解説しました。
農地法に係る許可申請では、行政との相談が不可欠です。
ご多忙のところ何度も足を運ぶのが大変とか、規制が複雑でよくわからないという方は、当事務所までお気軽にご相談くださいね。
この記事を書いた人は
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。
昨日から年末年始休業をいただいておりますので、いただいたご相談等へのお返事は年明け5日以降となります。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。