
一般社団法人を設立したい!
そう考え、相談にいらしたお客様からは、やる気と希望、ほんの少しの不安が見えます。
ぼくの仕事はこの「不安」を分解し、1つずつ解決する事。
そうして設立に至ったお客様を見送るのも、ぼくの務めです。
けれど、見送ったお客様から再び相談を受ける事があります。「お金」と「人間関係」です。
本記事では、一般社団法人でありがちな失敗事例と原因を考え、同じような悩みを持つ方の解決のヒントにしていただければ幸いです。
Contents
一般社団法人での失敗
一般社団法人(以下、「一社」といいます。)の設立を考える方の設立動機、理念をうかがうと、透明度が高く、一般的に「崇高」なものをお持ちの方が多いです。
この思いに動かされ、社員や会員になろうとする方が多い事も、一社を含めた非営利型法人の特徴ともいえます。
けれど、きちんと継続できる組織にするには「お金」が必要です。
企画する事業・イベントに人が集まり、忙しいにも関わらず、きちんとキャッシュポイントを掴めていなければ、集まった人たちとの間に歪(ひずみ)が生じるのも無理はありません。
これらの失敗の原因として、次のものが考えられます。
- 事業計画を立てていない
- 言語化できていない
- ビジネスモデルが成立していない
見事に”ないない”だらけになりました。1つずつ見ていきましょう。
事業計画がない
一社に限らずですが、事業計画のない事業の多くは失敗します。
ほとんどの組織では、代表がかじを取り、事業計画は代表の「頭の中」に描かれます。これを周知・共有するツールが事業計画です。
一社は「人の集まり」です。設立には2名以上が必要とあるように、1人で設立できません。
仮に、1人で運営するにしても、目に見える計画と頭の中だけの計画とでは精密度に大きく差が出ます。
事業計画では、事業目的や収支計画を策定します。このプロセスの中で成功要因とリスクを洗い出し、じっくり考える事で事業を軌道に乗せていきます。
また、理事報酬の決定にも収支計画は必要です。人間関係のもつれの多くは報酬ですから、設立前にしっかりと作成しましょう
言語化できていない
一社の設立時に「定款(ていかん)」を作成します。
この時に法人としての目的を決めますが、多くの場合「○○を通し、○○事業を行うことで、○○を目指すことを目的とする」の形になります。
設立時にしっかり定めているにも関わらず、悩みを抱える人の多くは「何をしている会社ですか?」の問いに答えられない場合が多いです。
同じように「貴社の強みは何ですか?」「目玉商品(サービス)は?」の問いに答えられない人や、「形」と「気持ち」を混同した回答です。気持ちとは、強みを聞かれ「お客様の助けになること」と答える事があたります。
法人として活動するのに、気持ちはもちろん大切です。しかし、もっと重要なのは「提供するサービスの良さ」です。
自分たちの良さ・強みを知り、きちんと言葉にするお手伝いをするのも、ぼくの仕事です。
ビジネスモデルとして成立していない
目的や強みをしっかり認識できていても、収入につながっていないケースがあります。これではただのボランティア。一社でやる意味がなくなってしまいます。
商品(サービス)開発の際、それだけを注視していると優先順位の低いところにコストがかかります。
商品は単品で考えるのではなく、各商品を連動させ、次に繋げる仕組みづくりが欠かせません。
そのために、ビジネスモデルの全体を見ていく広い視野を持ちましょう。
そもそも一般社団法人って?
ここで、一般社団法人(一社)について簡単にご説明します。
一社の特徴は次の3つです。
- 非営利法人
- 人の集まり
- 税制にて優遇措置が執られる
非営利法人
法人には「営利法人」「非営利法人」がありますが、一社は非営利法人です。
この「非営利」の言葉から、利益を出してはいけないとか、無料・良心的な価格でサービスを提供しなくてはならないといった誤解をされる人が多いのですが、全く違います。
「非営利」とは、利益を社員に分配することができない事をいいます。株式会社等でいう配当金です。
必要経費として役員や従業員に報酬を支払い、それでも余った利益は出資者に還元するのでなく、翌年度以降の活動資金として繰り越してね。これが非営利の意味です。
また、社員についても株式会社とは異なります。
株式会社の社員は「株主」を指しますが、一社では「議決権を持つ会員」を指します。一般的な正社員や職員、従業員ではありません。
人の集まり
現在の法律では、契約主体が「人」です。人の他には「法人」も主体となる事ができます。
しかし、法人以外の任意団体では契約主体となる事ができません。この場合、任意団体の代表者か、構成員の個人名での締結となります。
また、任意団体では「団体として」財産を所有する事ができず、ここでも代表者か構成員個人の名義で所有することになります。
こうした事情から、社会的に信用を得る事が難しいのが任意団体最大のデメリットともいえます。
一社では、この人の集まりに法人格を与える事ができます。
税制にて優遇措置が執られる
一社には2種類があります。
すべての所得に課税される場合と、収益事業のみに課税され、その他の事業には非課税の場合です。後者を「非営利型一般社団法人」と呼びます。
まぁ何だかややこしい話なのですが、非営利型にするには一定要件をクリアする必要があります。また、一見すると非営利型の方が有利に見えるかもしれませんが、事業内容によっては損をする事もあります。
選択の際には専門的な知識を要しますので、設立の際に税理士へ相談する事もご検討ください。
まとめ
様々な思いを胸に設立した一社だけど、「お金」と「人間関係」がうまくいかず継続が厳しい。このような悩みの原因と対策を考えてみました。
本記事が同じような悩みを持つ方、これから一社の設立を検討されている方の悩み解決・リスクヘッジの参考になれば幸いです。
- 事業計画を立てていない
- 言語化できていない
- ビジネスモデルが成立していない
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。