
「調停」と聞くと、一般的には「離婚」を連想される人が多いようです。
確かに、離婚に際して協議が伴わない時に利用される人も多いのですが、決して離婚のみを取り扱うものではありません。
当記事では、調停って何だろう?という疑問解決と、その種類やポイントをわかりやすく開設します。
Contents
調停(ADR)って何?
調停は、Alternative Dispute Resolution(=裁判に代替する紛争解決手段)といい、頭文字をとって「ADR」と呼ばれます。本記事でもADRと表記します。
ADR法によると、ADRとは
訴訟手続によらないで民事上の紛争の解決をしようとしている紛争の当事者のために、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続
ADR法 第1条「目的」より/e-Gov法令検索
とされています。
短い文章の中、2度も「紛争」というワードを使っているのはどうしてでしょうか。
ADRのポイントは
ADRを用いる大前提には、当事者「双方」がADRでの紛争解決を望んでいることがあります。片方が望んでも、他方が望まなければ、紛争≓裁判に持ち込む事になります。
これを踏まえ、ADRのポイントをまとめると次のようになります。
- 訴訟手続によらないこと
- 民事上の紛争を扱う事
- 解決しようとしている当事者双方
- 公正な第三者
- その解決を図る手段
ちなみに、ぼくの所属する神奈川県行政書士会は「公正な第三者」に含まれています。
裁判との違いは?
裁判では、最後に「判決」を言い渡されます。法律を根拠に色々な事情を考慮した結果、裁判官がジャッジ(判決)を下すのです。
いっぽう、ADRにも裁判官が関与する事はありますが、「判決」は下しません。ここでは「合意」をベースに進めます。
つまり、必ずしも法律を根拠とはせず、主に調整を図っていきます。
ちなみに、裁判は憲法の規定により原則「公開」で行われますが、調停は最初から最後まで「原則、非公開で、間に入る公正な第三者には守秘義務が課せられています。(※絶対的な非公開ではない点には注意が必要です。)
そのため、個人的で込み入った事情での調停も安心して活用できるというわけです。
調停の種類は?
調停は、運営主体によって大きく3つに分ける事ができます。
- 司法型
- 行政型
- 民間型
ADRの特徴
- 速い、負担軽、ゆるやか
- 専門的な知見に期待
- 時効中断効果も
- 「合意」大前提
速い、負担軽、ゆるやか
裁判は非常に時間がかかります。
弁護士や裁判官は日常的に広い分野の事件を取扱い、専門性の高い事件にあたる場合には知識の習得、争点整理等に時間がかかる事。異動の度に多数の事件を引継ぎ、各事件についての理解に手間取ることがその理由となります。
1人の裁判官が広汎な事件を担当する事そのものに無理があるようにも思えますが、制度上、すぐにはどうにもできません。
専門的な知見に期待
この点、調停に参加する調停委員は、各分野の専門家である事も多いため、迅速かつより専門的な知見を期待できます。
また、裁判と比べるとその費用もおさえられるのがADRの特徴です。
いざADRに踏み切ったものの、結局若いが成立する見込みがなく、中断する事になった場合。
時効中断効果も!
中断の通知を受けた日から1ヶ月以内に、同じ事件について訴訟を起こした場合、ADRの請求時に訴訟を起こしたとして扱われます。
これは、簡易迅速な紛争解決を目指して請求したのに、ADRをやっている間に消滅時効にかかってしまった!という自体を回避するための制度です。
反対に、裁判の最中にADRを請求する事も可能で、実施されている間は4ヶ月間は、裁判官による裁判手続中止の決定ができます。
「合意」大前提
多くの人が誤解していますが、調停は裁判所に何かを決めてもらうものではありません。決定権は常に当事者にあります。間に入る調停委員は、当事者に何か指示や強制をするのではなく、あくまで「調整」を目的とした客観的な助言にとどまるのです。
当事者間だけでは埒が明かない事案でも、公正な第三者、しかも専門的な知識のある人が入ってくれる事で、自分達だけでは見出せなかった解決策が見つかる事もあります。
ADRは、民事上の紛争を当事者だけでは解決できない場合、頼れる先が裁判のみという極端な状況から国民を救うための制度ともいえます。
いろいろなADRがある
ADRを実施している団体には、次のものがあります。
- 士業団体…弁護士会、弁理士、司法書士会、行政書士会、社労士会、土地家屋調査士会など
- NPO法人、社団法人、財団法人など
司法書士は、140万円以下の民事紛争、弁理士は知的財産仲裁センター等の指定場所で、それぞれ代理がデキます。また、土地家屋調査士は弁護士と共同受任する事で、境界ADR等で代理権を持つことができます。
この他、交通事故紛争処理センターや金融ADRなど、調停の中では異例の「義務」を課せられるものもあります。
まとめ
ADRの特徴は下記の通りです。
- 速い、負担軽、ゆるやか
- 専門的な知見に期待
- 時効中断効果も
- 「合意」大前提
争訟手続は時間や費用、心理的な負担も大きいものですが、「紛争解決の手段は、必ずしも裁判だけではない」という事が伝われば幸いです。
神奈川県行政書士会でも、ADR相談を受付けています。お問合せは、行政書士ADRセンター神奈川まで。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。