
行政書士試験に合格した!
難関と呼ばれる行政書士試験を突破したら、いよいよ「登録」です。
行政書士を名乗るには、試験に合格するだけでなく「登録」を経なければなりません。(合格しただけで行政書士を名乗っている人は違法となります。)
本記事では、行政書士登録に必要な準備や手続をお伝えします。
- 登録前に確認しておきたい事
- 登録までの流れ
- 必要な書類
- 行政書士事務所開業に必要な費用
- 登録後に必要な手続
Contents
登録前に確認しておきたい事
下記の人は、行政書士の欠格事由に該当するため、登録ができません。
- 未成年者
- 破産手続開始の決定を受け、復権を得ない人
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなってから3年を経過しない人
- 公務員(行政執行法人 又は 特定地方独立行政法人の役員 又は 職員を含む。)で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から3年を経過しない人
- 登録の取り消し※を受け、処分の日から3年を経過しない人
- 行政書士法第6条の5 第1項「日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が、偽りその他不正の手段により当該登録を受けたことが判明したときは、当該登録を取り消さなければならない。」
- 業務禁止の処分※を受け、当該処分の日から3年を経過しない人
- 行政書士法第14条「行政書士が、この法律若しくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は行政書士たるにふさわしくない重大な非行があつたときは、都道府県知事は、当該行政書士に対し、次に掲げる処分をすることができる。」
- 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消処分を受け、弁理士、税理士、司法書士若しくは土地家屋調査士の業務を禁止され、又は社会保険労務士の失格処分を受けた者で、これらの処分を受けた日からj3年を経過しない人
- 税理士法の処分※を受けるべきであったことについて決定を受けた人で、当該決定を受けた日から3年を経過しない人
- 第48条第1項の規定(財務大臣は、税理士であつた者につき税理士であつた期間内に第四十五条又は第四十六条に規定する行為又は事実があると認めたときは、当該税理士であつた者がこれらの規定による懲戒処分を受けるべきであつたことについて決定をすることができる。この場合において、財務大臣は、当該税理士であつた者が受けるべきであつた懲戒処分の種類(当該懲戒処分が第四十四条第二号に掲げる処分である場合には、懲戒処分の種類及び税理士業務の停止をすべき期間)を明らかにしなければならない。)により第44条第3号に掲げる処分(税理士業務の禁止)
長くて煩雑ですが、大事な事ですので目を通しておきましょう。
登録までの流れ
欠格事由に該当しない事が確認できれば、いよいよ登録手続です。
合格から登録までの流れは、下記の通りです。
- 合格証の授受
- 登録要件の確認
- 申請書類等の作成・準備
- 登録申請
- 登録
合格証の授受
行政書士試験は、毎年11月の第2日曜日に行われ、1月末頃(1月最後の水曜日である事が多いように思います。)に合格発表が行われます。
合格者には2月上旬から中旬にかけ、合格証書が送付されます。
この証書は、登録時や他の資格試験で免除を受ける際に必要となるので、大事に保管しておきましょう。
登録要件の確認
行政書士登録をするには、事務所を設置する都道府県にある行政書士会(「単位会」と呼ばれます。)に入会手続、単位会を経由して日本行政書士会連合会へ行政書士名簿への登録申請を行います。
要するに「行政書士名簿への登録・行政書士証票類の作製等は日本行政書士会連合会がやるけど、各都道府県の単位会で申請書類は取り扱う」という”便宜上”のシステムなので、申請者は所属予定の単位会に確認すれば間違いはありません。
申請書類等の作成・準備
ここでは、神奈川県行政書士会を例に挙げます。
必要な書類は?
下記の書類が必要となります。
- 行政書士登録申請書
- 住民票の写し(本籍地の記載のあるもの)
- 履歴書(両面)
- 資格を証する書面
- 誓約書
- 身分証明書
- 事務所の使用権を証する書面
- 事務所の位置図
- 事務所の平面図
- 事務所の外観及び内部の写真
- 入会届
- 申請者の顔写真
- 雇用契約書(行政書士又は行政書士法人の使用人になる場合)
- 社員となる法人の予定定款の写し又は定款案の写し(行政書士法人の社員になろうとする場合)
詳細は、神奈川県行政書士会公式ページにてご覧下さい。
各様式は、日本行政書士会連合会公式ページにてダウンロードできます。
行政書士登録申請書の取り下げもできる
登録申請後、やっぱり取り下げたいと思った場合、「行政書士登録申請取下げ申出書」の提出が必要になります。
こちらの様式も行政書士会連合会の公式ページ(ページ下部)に用意がありますので、必要ならばダウンロードしてお使いください。
申請方法
必要書類が準備できたら、行政書士会に郵送します。
宛先は下記の担当者まで。
〒231-0023
神奈川県横浜市中区山下町2番地 産業貿易センタービル7階
「神奈川県行政書士会 新規登録担当」 宛て
提出内容に不足、補正等があれば、担当者より連絡がありますので、適宜対応してください。
提出から1~1ヶ月半ほどの審査期間の後、登録完了通知と新規会員登録証交付式等の案内が届きます。
この交付式は絶対参加なので、入会者は必ず1度は神奈川県行政書士会を訪れる事になります。
行政書士事務所開業に必要な費用は?
行政書士登録に必要な費用は、下記の通りです。
- 登録免許税、登録手数料、入会金等
- 事務所等設備費
- 人件費(人を雇用する場合)
- 備品等
登録免許税、登録手数料、入会金等
冒頭で申し上げた通り、行政書士を名乗るのに登録は必須です。
自身で開業しようが、行政書士法人で働こうが、これだけは変わりません。(雇用主が費用を支出してくれるとしても、です。)
つまり、ここに挙げる費用は必ず必要となります。
「入会金」「月会費」は各単位会ごとに異なりますが、ここでは神奈川県行政書士会を挙げます。
費目 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 30,000円 |
登録手数料 | 25,000円 |
入会金 | 250,000円 |
会費 | 月額6,000円(※24,000円) ※初回は4ヶ月分をまとめて納めます |
事務所等、設備費
行政書士事務所の開業において、「事務所」としての設置指導基準が定められています。(日本行政書士会連合会「行政書士事務所設置指導基準」より)
事務所の要件に「事務所の使用権現が適性であること」とあります。
賃貸物件の場合、行政書士事務所としての利用が許可されていれば、事務所としての使用を前提としない物件でも開業可能という事になります。
登録申請時には、これを証明する書面を添付する必要がありますので、不動産の管理会社に行政書士事務所としての利用が可能かどうかを確認しましょう。
事務所を借りる場合の注意点は?
自宅を行政書士事務所として利用する事ができない場合、賃貸が考えられます。
費用を抑える事を考えるのなら、シェアオフィスという選択肢もあります。
シェアオフィス等、他人と共同での利用を前提とする場合に注意したいのは、自分の事務所と他の利用者の利用スペースを明確に区別できるものとしなければならない点です。
事務所要件につき、最終的な決定権を持つのは所属単位会ですので、都度相談しましょう。
事務所を借りる際の費用
一般的にオフィスを借りるには、「初期費用」「賃料」「更新料」「原状回復費用」がかかります。
賃料5万円、保証金6ヶ月のオフィスを例に初期費用を試算します。
費目 | 金額 |
---|---|
保証金 | 30万円 |
前家賃 | 5万円 |
仲介手数料 | 5万円 |
保証会社保証料 | 5万円 |
火災保険料 | 2万円 |
合計 | 47万円 |
中には、「敷金・礼金」「保証金」のかからない物件もありますが、概ねこの程度はかかるものと考えて支度しなければ、簡単に予算をオーバーします。
設備について
設備について、下記のものを備えるよう記載されています。
- 事務用机・椅子
- 書類保管庫
- 金庫
- 電話
- コピー機
- 書類作成装置(パソコン・ワープロ等)
- 事務所入来者控用具(テーブル・椅子・記載代等)
- 用紙、雑品等収納庫または収納棚
- 業務用図書および図書棚
これらを1から備えるとなると、それなりにまとまった費用が必要です。
既に自宅にあるテーブルや椅子等、本棚等を使用し、自宅で小規模開業する場合、
費目 | 金額 |
---|---|
金庫 | 20,000円 |
コピー機 | 10,000円 |
ノートパソコン | 100,000円 |
クラウドサーバー等 | 年間7,000円~ |
シュレッダー | 2,000円 |
合計 | 142,000円 |
全て家庭用サイズで揃えると、この程度で抑えられます。
業務用サイズで準備をする場合には購入ではなく、リースも検討するといいでしょう。
人件費は?
自分以外の人を使用する場合、最低賃金を下回る事はできません。
令和5年5月現在、神奈川県の最低賃金は「1,071円/時」です。
この他、補助者登録申請や社会保険手続が必要になる場合もありますので、注意が必要です。
備品は?
事務所開業に必要な備品は下記の通りです。
- 職印
- バッジ
- 看板
- 名刺
- 保険
- 会計ソフト等
職印
行政書士の職印とは、行政書士会に登録された印鑑のことをいいます。
行政書士は、日本行政書士会連合会の会則の定めるところにより、業務上使用する職印を定めなければならない。
行政書士法施行規則第11条(職印)
その上、職印の形式も日本行政会連合会会則(別記様式第一)に定められています。
サイズは書く単位会により差異があるようなので、事前に確認しましょう。
神奈川県行政書士会では15mm~がデフォルメのようです。
懇意にしている印鑑業者さんがいるのでなければ、登録入会時、所属単位会へ依頼してしまうのが楽だと思います。実際、ぼくがそうでした。
ちなみに、作成費用は12,800円で、仕上がった印面は15mmでした。
バッジ
行政書士登録証交付式において、バッジをもらいます。
多くの単位会は「購入」の形式を取るようですが、我が神奈川県行政書士会では「貸与」の形をとっていたようで(令和3年6月時点)、金銭は支払っていません。
一般的には3,000円前後のようです。
ちなみに、現在は「特定行政書士徽章」を7,000円程度で購入し、着用しています。
看板
行政書士事務所の入り口には表札(看板)の掲示義務があります。
登録申請時に用意ができていない場合、掲示予定箇所を確認できる写真の添付が必要となります。
神奈川県行政書士会に注文した場合、下記の通りです。
サイズ | 価格 |
---|---|
300mm×200mm アクリル(白) | 2,530円 |
300mm×100mm アクリル(白) | 2,090円 |
150mm×70mm アクリル(白) | 1,870円 |
150mm×70mm ステンレス(グレー) | 8,250円 |
神奈川県では、サイズや縦横などの規定はありません。
名刺(任意)
行政書士業務に携わるのなら、名刺の作成はしておいた方が良いでしょう。
こちらにも規定はなく、ご自身の好きなものを作成して構いません。
参考までに、ぼくの名刺は100枚5,500円です。
保険
努力義務ではありますが、日本行政書士会連合会では賠償責任補償制度への加入を推奨しています。
登録証交付式の際、全行団のパンフレットをもらいますが、自身の懇意にしている保険会社で同様の商品があればそちらを検討しても良いでしょう。
会計ソフト等
個人事業主として開業する場合、確定申告が必要です。自身で会計処理をするのなら、会計ソフトを用意するのが得策といえるでしょう。
ぼくの場合は「やよいの青色申告オンライン」に加入しました。
プラン別に価格は異なりますが、年間8,800円~24,000円の料金がかかります。
登録後に必要な手続は?
登録申請と同時、または、登録後に必要な手続です。
名称 | 提出先 | 期限 |
---|---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 | 納税地の所轄税務署 | 開業日から1か月以内 |
所得税の青色申告承認申請書 | 納税地の所轄税務署 | 開業日が1月1日~15日までの場合は3月15日まで 1月16日以降の場合は、開業日から2か月以内 |
青色事業専従者給与に関する届出書 | 納税地の所轄税務署 | 同上 |
事業開始等申告書 | 都道府県税務事務所 | 開業日から1か月以内 |
消費税課税事業者選択届出書 | 納税地の所轄税務署 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日(原則12月31日まで) |
税務署提出書類はこちらからダウンロードできます。
まとめ
行政書士登録・開業に必要な費用、手続についてご紹介しました。
- 登録前に確認しておきたい事
- 登録までの流れ
- 申請前に必要な手続・準備
- 行政書士事務所開業に必要な費用
- 登録後に必要な手続
「行政書士」を名乗るだけでも費用がかかりますし、登録自体にも様々な準備や手続が必要な事がおわかりになるかと思います。
これから登録をお考えの方、開業を悩んでいる方は最低限度の知識を持って、準備に臨みましょう。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。