
本記事では、令和5年4月から施行されている改正民法のポイントを解説します。
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改正民法とは?
改正民法は、令和3年4月28日公布、令和5年4月1日施行の改正後の民法のことです。
空き家問題をはじめ、所有者不明土地の増加によって生じる土地の利用阻害、隣地への悪影響などを改善するため、改正に至りました。
まとめると、次の通りです。

相隣関係規定の見直し
相隣関係規定の改正版は次の通りです。

隣地使用権の拡大
これまで境界、または付近における障壁や建物を築造・修繕する目的で隣地の使用が認められていました。
逆に言えば、この目的以外では使用ができませんでしたが、今回の改正では、境界標の調査、または境界に関する測量、隣地の竹木の枝を切り取るための使用も可能となりました。
竹木の枝の切除
これまでは、隣地から竹木の「根っこ」が侵入してきた場合、切除が許されていました。
いっぽう、竹木の「枝」が自分の所有地に侵入してきた場合、隣地の所有者に切除を申し入れることができるに過ぎず、こちらで切除するのは許されませんでした。
今回の改正でも、原則は切り取ることはできない姿勢を維持しつつも、下記の場合には例外的なカットが許されるようになりました。
1.竹木の所有者に切るよう催告にしたのに、相当の期間内に切除してくれないとき 2.竹木の所有者がわからず、または、その所在がわからないとき 3.急迫の事情があるとき |
ライフラインの供給設備の設置
位置、形状の都合により、隣地に設置しなければ、自分の所有地まで電気・ガス・水道などのライフラインの供給が受けられない場合。
他に方法がなく、かつ、必要最小限度において、他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用させてもらえるようになりました。
本条文は既存のものを改めたのではなく、新設です。
共有制度の見直し
共有制度の見直しは次の通りです。

ほかの共有者に対して
これまでの民法では、共有物を使用する一部の共有者が、他の共有者にどんな義務を負うのかという規定がありませんでした。
今回の改正では、「自分の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う」として、持分を超えた使用に対しての償還義務、善管注意義務が明文化されました。
一部共有者が使用している場合の使用方法の変更
もともと、管理についてはそれぞれの持分に従い、過半数で決めることになっていました。
改正ではこの後に、共有物を使用する共有者があるときも同様とするという一文が加わりました。
わかりやすく言えば、現在進行形で共有物を使用している共有者がいても利用方法を変更できるようになったわけですが、実際に使用している共有者にも配慮し、「特別の影響を及ぼすべきと木は、共有者の承諾を得なければならない」という規定も置かれています。
変更・管理の決定方法
これまで、各共有者は他の共有者から同意をもらえなければ、共有物に変更を加えることができませんでした。
しかし、軽微な変更の都度、全員の同意を得るのは非常に手間がかかります。
そこで、一定の変更であれば全員の承諾を得なくても、共有持分の価格に従って過半数で決定できるようになりました。
更に、下記の年数を超えないものなら、持分価格に従って、過半数で決められることも明文化されました。

管理者制度
共有者が、ほかの共有者とは別に第三者を管理者と定め、日常的に必要な管理を任せられることになりました。
ただし、管理者が共有物に変更を加える場合には、他の共有者全員の同意を要します。
所在等不明共有者がいる場合
共有者の中に所在不明者がいる場合に備え、今回の改正で下記の措置が新設されました。

自分以外の共有者を知る事ができない、またはその人の所在を知る事ができない場合、所在等不明の共有者の持分について、
- 所在等不明共有者以外の共有者が取得する措置
- 所在等不明共有者以外の共有者が第三者に譲渡する権限を付与する措置
が認められます。
その他、不明者を除く共有者全員の同意があれば、3.共有物の変更、4.管理に関し、決定ができるようになりました。
共有物分割請求訴訟
今回の改正では、共有者の間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときには、裁判所に共有物の分割請求をすることができるとされました。
そのうえで、裁判所は請求があった場合、次の措置をとれることも明文化されました。
- 1次的に共有物の現物を分割する方法(現物分割)
- 共有者に債務を負担させ、ほかの共有者の持分の全部または一部を取得させる方法(賠償分割)
- 2次的に、1と2ができない時、または分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは競売を命じる(競売分割)
土地・建物の管理命令
所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない場合の土地・建物について、裁判所が管理人に管理を命ずる仕組みが新設されました。
まとめると次の通りです。

※本制度はマンションの専有部分、共有部分には適用されません。
相続制度の見直し
これまで、開始から時間の経った相続についての規定は時効のみでしたが、「特別受益」「寄与」について下記の通り定められました。

遺産共有における共有物分割請求
これまで、遺産分割手続に関する時期的な制約はなく、かつ、遺産共有についての共有物分割訴訟は認められませんでした。
今回の改正ではこれ一新し、相続開始から10年を経過したときは、相続財産に係る共有持分についての分割請求が可能となりました。
相続土地国庫帰属法の新設
相続により土地を取得したものの、手放したい人が一定数います。
こういった相続人にとって、土地の取得は負担でしかなく、放置や管理不全の原因となります。
これらを予防することを目的として、令和5年4月27日に施行されたのが「相続土地国庫帰属法」です。
要件や負担金は下記の通りです。

大まかな流れは次の通りです。

まとめ
本記事では、令和5年4月1日、同年4月27日に施行された改正民法について解説しました。
令和6年4月1日より施行される相続登記義務化については、下記の記事をご覧ください。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。