
本記事では、退職後でもパワハラを告発できるかどうか?解説します。
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退職後でもパワハラの告発は…
可能です。
在職中に訴えられるケースが多いものの、退職後に告発できないわけではありません。
時効がある
パワハラに対する損害賠償請求をする場合、「不法行為に基づく損害賠償請求」または「不法行為に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求」のいずれかで争うことになります。
前者の場合は次の通りです。
- 損害および加害者を知ったときから3年以内、かつ、不法行為の時から20年以内
後者の場合、次の通りです。
- 損害および加害者を知ったときから5年以内、かつ不法行為の時から20年以内
いずれも不法行為の時から20年以内であることは変わりありませんが、損害および加害者を知ったときから「3年」「5年」という点で異なります。
パワハラで会社が問われる法的な責任
次のものが考えられます。
- 不法行為責任
- 使用者責任
- 債務不履行責任

パワハラ告発の手段
考えられるのは下記の方法です。
- 自分で会社と交渉する
- 労働審判手続きの申立て
- 弁護士への相談・依頼
- 労働基準監督署への通報
自分で会社と交渉する
退職した会社に連絡し、自身で交渉を申し入れます。
この際、自分がどうしたいのかを明確化させておかなくてはなりません。
パワハラで患った疾病に対し、損害賠償請求をしたいのか。
受けた精神的苦痛に対し、慰謝料を請求したいのか。
加害者である上司本人に謝罪をさせたいのか。
着地点のない話し合いは路頭に迷い、結局何が言いたいのかわからず取り合ってもらえない可能性があります。
意見をまとめるのが不安なのであれば、まずは弁護士へご相談されることをおすすめします。
労働審判手続きの申立て
交渉が決裂した場合、労働審判手続きを検討します。

当事者に異議申立てがなければ審判は確定します。
この時に下った審判結果には、裁判の「和解」と同様の効力があり、万一会社側が決定した内容に背けば強制執行を申立てることができます。
一般的な訴訟との違いは原則「非公開」で行われること、解決までにかかる日数が少ないことです。
もしも労働審判で解決しなければ、民事訴訟の手続を行います。
弁護士への相談・依頼
弁護士に相談すると、自分の代わりに会社と交渉を行ってくれます。
労働審判や訴訟手続も任せられるため、どうしても会社をこらしめたい!という方は初期での相談をおすすめします。
労働基準監督署への通報
注意して欲しいのは、労働基準監督署は慰謝料請求など民事には介入しません。
あくまでも法律に沿った運営がなされているかを監督しているにとどまるため、労働基準法などの違法行為があれば是正勧告がなされます。
具体的には、残業代の未払、不当解雇、労災の隠蔽などです。
必要な準備は?
次の2つです。
- 自身の希望を整理する
- 在職中に証拠を集める
「自分で交渉する」の項でもお話しましたが、手続などの「手段」ばかり優先し、希望や目的を置き去りにしては永遠に消息しません。
これに沿った証拠を在職中から収集しておくことで、退職後の告発も優位に進めることができます。
告発にかかる費用
一般的には、次の費用がかかります。
- 弁護士費用
- 訴訟費用
弁護士費用
弁護士に相談・依頼する場合、報酬が発生します。
相談料の相場は、30分で5,000円から20,000円と相談先により異なりますので(※無料のところもあります)、ご自身が相談を検討される先に確認しましょう。
また、依頼時には「着手金」が必要です。
訴訟の場合は訴訟請求額の○%と計算されるのが一般的ですが、着手金は内容に関わらずかかります。
この他、成功報酬や印紙代などの実費、交通費なども必要です。
訴訟費用
訴訟時には、裁判所に手数料を納めます。

手数料額は損害賠償の「請求額」に応じて変動するため、自身の目的額が明確でなくてはなりません。
パワハラに対して支払われる慰謝料額の相場は10万円から100万円と開きがありますが、必ずこの金額が支払われるわけではないことには注意が必要です。
まとめ
本記事では、退職後のパワハラ告発について解説しました。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。