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人が死亡すると、相続が発生します。
相続人は、相続財産を調査し、相続税の申告・納税を行う義務がありますが、このときに見落としがちなのがタンス預金です。
当ページでは、タンス預金を申告しなかった場合のペナルティ、隠し通せる可能性について解説します。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
タンス預金とは
タンス預金(タンス貯金)とは、まとめて自宅に保管している現金のことをいいます。
昔は、貴重品を桐箪笥等にしまったことから「タンス預金」と名付けられていますが、金庫や書庫等にしまっている預金も含まれます。
タンス預金も課税対象
銀行または信用金庫等の金融機関が介入しないため、タンス預金は足がつきづらい特徴があります。
このため、子どもや孫に贈与してもバレないとお考えの人もいるかもしれません。
しかし、対象がタンス預金であっても、贈与には贈与税、相続では相続税の課税対象となります。
タンス預金を隠し通すことは可能か
そうは言っても、バレなければ大丈夫と考えている人もいるでしょう。
タンス預金を隠し通すには、時効を知る必要があります。
相続税申告から5年間
相続税の申告・納税は、原則、相続開始を知った日から10ヶ月以内です。
相続税申告の時効は、申告期限から5年間なので、被相続人の死亡から5年10ヶ月間隠し通せれば、税務調査が入ることはありません。
悪質な場合は7年間に延長
ただし、例外があります。
相続税の申告・納税義務があるとわかっていた上で、申告を行わなかった場合には「悪質」と判断され、時効は7年間に延長されます。
5年または7年、いずれの時効を適用するかは申告義務者の悪意の有無で判断されます。
「期限を忘れていた」「申告義務があるとは知らなかった」は言い訳にすらなりません。
つまり、相続開始から7年10ヶ月間は怯えて過ごさなくてはならないことになります。
タンス預金が発覚するルート
なぜタンス預金がバレるのか、不思議に思われるかと思います。
税務署は次のルートを辿り、タンス預金を発見します。
1.国税総合管理(KSK)システム
税務署は、「国税総合管理(KSK)」というネットワークで全国の国税局と税務署を結び、申告・納税の実績情報等を一元的に管理しています。
日本国内すべての納税者から提出される申告書が把握され、資産の購入売却履歴など、詳細なデータを蓄積しているため、タンス預金以外の資産が動いた段階で税務調査の対象となる可能性があります。
2.実地または反面などの税務調査
KSKシステムに加え、税務署では実地調査、反面調査を行います。
実地調査は「任意調査」ですが、納税者には受忍義務があり、拒否すれば罰則規定の対象となります。
具体的には、相続人への聴き取り、相続人および被相続人の通帳・印鑑、家財道具の中身まで調べられます。
反面調査では、取引銀行、証券会社、保険会社、その他関連機関にて聴取が行われます。
税務調査と聞くと身構える人もいますが、実際に来られるのはふつうの人です。雑談から始まり、終始フランクな聴取となりますが、かえってボロが出やすく、税務職員もこれを見逃しません。
3.遡及的な預貯金調査
相続に関する税務調査では、最短でも過去10年間の取引記録が対象となります。
例えば、給与の振込先から毎月一定額の引き出しがあるのに、使途がわからない場合、自ずとタンス預金が疑われます。
逆に、使途や支出先が明確なら疑いは晴れますが、客観的な証拠を求められます。
タンス預金がバレた場合のペナルティ
無申告のタンス預金がバレた場合、次のペナルティが課されます。
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 延滞税
- 重加算税
無申告加算税
無申告加算税は、申告期限までに確定申告をしない場合のペナルティです。
税率は、納付すべき税額のうち、50万円までは15%、50万円を超え300万円以下は20%、300万円を超える部分は30%です。
ただし、期限後1ヶ月以内の申告や、税務調査の通知前に自主申告すれば軽減されます。
意図的な脱税など、悪質と判断された場合、この無申告加算税に代わり、重加算税が課されます。
過少申告加算税
相続税申告において、申告はしたものの、申告した税金額が少なかった又は還付金が多すぎる場合、過少申告加算税が課されます。
税率は、追納する税金のうち50万円までは10%、50万円を超える部分は15%です。
ただし、税務調査の通知前に自主申告すれば、課されません。
延滞税
延滞税は、次の期限までに納税されなかった場合のペナルティです。
- 期限内に申告はしたものの、納税が遅れた場合
- 期限を過ぎて申告または修正申告し、追納する必要がある場合
- 更生または決定により納税する必要がある場合
納期限の翌日から完納された日までの日数に、該当する税率をかけて算出しますが、税率は毎年変動します。
- 納期限の翌日から2ヶ月以内…年2.4%
- 納期限の翌日から2ヶ月を越える部分…年8.7%
重加算税
相続税を申告したものの、意図的に財産を隠したり、税金を逃れようとした場合、無申告加算税、過少申告加算税に代え、重加算税の対象となります。
過少申告加算税の代わりなら35%、無申告加算税の代わりなら40%です。
脱税と判断されると、追徴課税だけでなく刑事罰として10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこの両方が科される可能性があります。
タンス預金のメリット
タンス預金のメリットは次の点です。
1.自由度が高い
通常、相続が開始すると被相続人(死亡人)の預貯金口座は凍結されます。
このとき、清算すべき費用があるのに、手元に現金がなければ困ることになりますが、タンス預金の場合、凍結の心配がないため、自由に支出することが出来ます。
その他、取引時の手数料もかかりません。
2.銀行破綻などのリスク回避
普通口座への預金額が1000万円を超える場合、預け先の金融機関が破綻した際、1000万円を超える部分は補償の対象外となりますが、タンス預金の場合は、このリスクがありません。
証券口座または当座預金を利用すれば、利息はつきませんが、全額補償対象になります。
3.情報漏えいの心配がない
平成30年(2018年)から、預金口座にマイナンバーを紐付けることができるようになりました。
当制度は任意ですが、自分のお金を金融機関という第三者に預ける時点で、個人情報を預けることになります。
この点、タンス預金では、第三者が一切介入しないため、個人情報・預貯金額が公になることはありません。
タンス預金のデメリット
タンス預金をする場合、次の点に注意しましょう。
1.盗難、災害等で紛失の恐れ
タンス預金で最も恐ろしいのが、盗難や災害による紛失(滅失)リスクです。
自宅に多額の現金を保管していると、盗難や災害による金銭的な被害が拡大する一方で、火災保険などの保険の補償範囲外。
一瞬にして失うリスクが常に付きまといます。
金融機関に預けておけば、災害等に遭っても預金は護られますし、全国どこでも引き出せるメリットもあります。
2.減る事もないが増える事もない
過去と比較すると利率は下がっているものの、わずかな利息は発生します。
タンス預金の場合、使わず、滅失しなければ減る事はありませんが、増える事も決してないのはデメリットだといえます。
3.申告漏れのリスクが高い
相続人がタンス預金を発見できないまま、相続税の申告・納税を行った場合、脱税の意図はなくとも過少申告加算税の課税対象となります。
遺産分割協議書が調った後に発見された場合、再度、相続人全員が集まって協議を行う必要も生じます。
相続税でお困りの際は
相続財産を調査中、タンス預金を発見したり、相続税についてご不明・ご不安な点があれば、お近くの税務署または税理士までご相談ください。
タンス預金まとめ
当ページでは、タンス預金と相続税について解説しました。