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当ページでは、令和6年(2024年)1月から施行※されている改正著作権法の概要、改正による影響等を解説します。
※一部改正法については今後施行される見通しです。
Contents
筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士/文化庁著作権相談員
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
著作権法改正の概要
令和5年(2023年)著作権法の一部を改正する法律案が国会で成立し、同年5月に公布されました。
改正されたのは次の3つです。
- 著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等
- 立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置
- 海賊版被害当の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し
改正著作権法の施行日
それぞれの施行日は、下記のとおりです。
- 著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等…交付日から3年を超えない範囲で政令で定める日
- 立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置…令和6年1月1日
- 海賊版被害当の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し…令和6年1月1日
令和6年1月時点において、施行されているのは2と3のみです。
1.著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等
著作物等の権利者及び連絡先等が不明な場合について、既に「著作権者等不明等の場合の裁定制度」が運用されていますが、手続き面でのハードルが高く、利用希望者に相当な負担がかかるとの指摘も多いものでした。
(1)新裁定制度と窓口組織の活用
本改正法は、なかなか権利処理が進まない著作物等について、より円滑な利用を叶えるものです。
本改正法では、著作権者等の意思確認に関する手続きと要件を緩和する一方で、著作権者等の申し出があれば利用を停止することにより、利用の円滑化と著作権者保護のバランスを図ります。
新裁定制度が活用できるのは、公表された著作物または相当期間にわたり公衆に提供され、もしくは提供されている事実が明らかな著作物(未管理公表著作物等)のうち、次の1、2に該当しないものです。
- 著作権等管理事業者による管理が行われているもの
- 文化庁長官が定める方法により、当該公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を円滑に確認するために必要な情報であって文化庁長官が定めるものの公表がされているもの
著作権者側からすると、自身の著作物等が「未管理公表著作物等」に該当しないような措置を講じておく必要がありますが、詳細な要件は「施行日までに文化庁長官告示」にて示されることしかわかっていません。
(2)新裁定制度の要件
新裁定制度において、月の要件をすべて満たした未管理公表著作物等は、文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料に相当する補償金を供託することで、著作権者等の許諾なく、利用することができます。
- 未管理公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を確認するための措置として文化庁長官が定める措置をとったにもかかわらず、その意思の確認ができなかったこと
- 著作者が未管理公表著作物等の利用を廃絶しようとしていることが明らかでないこと
(3)補償金額等
新裁定制度の利用者は、原則、補償金を供託する必要があります。
窓口組織が存在している場合、文化庁長官が指定・決定する供託金は、こちらで金額が決定され、支払いもできます。
この窓口組織については、次の2種類またはいずれも兼ね備えた機関が担うことが考えられます。
- 補償金の受領、著作権者等への支払業務を行う補償金管理機関
- 申請受付、未管理公表著作物等の要件確認等の業務を行う登録確認機関
2.立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置
旧著作権法は、立法・行政を前提とした内部資料として必要な著作物等につき、著作権者等の許諾なく複製・譲渡を行えるものの、公衆送信等は除外されていました。
立法・行政の場でもデジタル化が進む中、ウェブ上で資料をやり取りする機会が増えたことで、今回の改正に至りました。
(1)立法又は行政の内部資料についてのクラウド利用等の公衆送信等
本改正では、複製・譲渡に限らず、内部資料の利用者間での公衆送信および受信装置を用いた公の伝達行為を許容する旨を追加しました。
これに伴い、国会や市区町村役所内部での第三者著作物を含む資料の閲覧を、著作権者等に許諾を得ることなく、メールやクラウド上で行うことができます。
ただし、立法・行政目的を前提としているため、民間企業等には適用されません。
(2)特許審査等の行政手続等のための公衆送信等
特許審査等の行政手続き、行政審判手続きについても、デジタル化に対応し、必要と認められる限度で著作物等を公衆送信等できるようになりました。
裁判手続きについても、IT化のための各制度改正に併せ、法整備を進める方針です。
3.海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し
著作権法には、権利を侵害された著作権者等の立証負担を軽減するため、損害賠償額の算定規定を定めていますが、海賊版サイト等による被害が深刻化している事態を受け、より具体詳細な内容へと改正されました。
(1)侵害品の譲渡等数量に基づく算定に係るライセンス料相当額の認定
本改正により、下記の合計額を権利者の損害額とすることが明文化されました。
- (販売等相応数量-特定数量)×権利者の単位数量あたりの利益額
- {(譲渡数量-販売等相応数量)+特定数量}に応じたライセンス料相当額
「販売等相応数量」は、権利者の販売等の能力に応じた数量をいい、「特定数量」は、権利者が販売することができないとする事情に相当する数量のことをいいます。
ただし、元の著作物等にない付加価値が大きく、元の著作物等の貢献度が認められない場合には、合計されることはありません。
(2)ライセンス料相当額の考慮要素の明確化
旧法において「ライセンス料相当額」とは、著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額のことをいい、これを損害額として請求できると規定されていました。
本改正では、著作権侵害があったことを前提として交渉した場合に、算定されるであろう金額を考慮できることが明記されました。
参考ページ
令和5年著作権法改正による影響 まとめ
当ページでは、令和5年著作権法改正による影響、概要等を解説しました。