
本記事では、事業承継税制についてわかりやすく解説します。
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事業承継税制とは?
事業承継税制は、承継を受けた後継者が「会社の事業を継続すること」を条件に、本来かかるはずの税金を全額免除してもらえる制度です。
具体的には、創業者から承継を受けた2代目が、将来3代目に承継できた場合に、2代目が払うはずだった税金を全額免除してもらえるものです。
事業承継税制を適用できるのはどんなとき?
この制度を利用するためには、大きく4つの要件があります。
2.会社の要件
3.スタートから5年間の要件
4.最後の要件
「人」が満たすべき要件
ここで言う人は、「先代」と「後継者」に分かれます。
先代の要件
- 会社の代表取締役だったこと
- 贈与 又は 相続直前に筆頭株主であったこと
- 贈与時には代表取締役ではないこと
後継者の要件
- 贈与を受けるとき、代表取締役に就任していること
- 贈与 又は 相続により、会社の筆頭株主になること
贈与の場合、贈与前から3年間継続して、その会社の役員である必要があります。
相続の場合、相続発生から5か月以内に代表取締役になる事と、相続発生時に役員であることが必要です。
会社の要件
- 中小企業基本法で規定された「中小企業者」に該当すること
- 資産管理会社に該当しないこと
- 上場会社、風俗営業会社に該当しないこと
中小企業者とは?
次の要件を満たす会社をいいます。
業種目 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
製造業のうち製品製造業 (一部製造業は除外※) | 3億円以下 | 900人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
サービス業のうちソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
サービス業のうち旅館業 | 5000万円以下 | 200人以下 |
「資本金基準」または「従業員基準」のいずれかを満たせば構いません。
資産管理会社って何?
下記を満たすと、資産管理会社に該当するため、本制度の適用は受けられません。
- 血縁関係のない従業員が5人以上いる
- 事務所や店舗、工場がある
- 3年以上事業をしている会社
スタートから5年間の要件
- 後継者が代表者でいること
- 後継者が会社の株式を保有すること
- 会社の雇用の8割をすること
1度事業承継税制を適用すると、最低5年間、後継者はこれらの条件を継続しなければなりません。
最後の要件は?
- 次の代に事業承継すること
5年要件をクリアすれば、すぐに税額免除の適用があるわけではありません。
生前贈与として事業承継をするには、同じく事業承継税制を利用して贈与することが条件となります。
相続での事業承継では、後継者(3代目)に相続税が発生します。
ただし、猶予されていた2代目の税金は全額免除です。
M&A(売却)をしてしまった場合、本制度は適用されませんので、猶予されていた税金を全額納付する事になります。
事業承継税制のメリットは?
本制度が対象とする法人形態は株式会社です。
株式会社では、株式の評価額が大きくなるほど相続税も増えますので、納税のために一定の財源を確保する必要があります。
相続税申告は原則一括ですので、納税のためだけに様々なものを犠牲にする可能性も。
事業拡大と承継を考える社長さんにとっては、魅力的なメリットだと言えます。
相続税の申告・納付については、こちらの記事で詳しく解説しています。
相続税の計算方法が気になる方は、こちらも併せてご覧ください。
事業承継税制のデメリットは?
下記の通りです。
2.途中で辞めれば利息が発生する
3.届出書の提出等、手間がかかる
M&Aができなくなる
事業承継税制の説明を聞くと、皆さん口を揃えて「M&Aができなくなるのがデメリットです。」とおっしゃいます。
が、事業承継税制でM&Aは禁止されていません。
すなわち、M&Aは出来ます。
ただ、その場合には「猶予していた税金を支払ってね」というだけの事なのです。
制度利用時と売却時の株式評価額を対比してプラスなら、デメリットとは言えません。
途中で辞めれば利息が発生する
例えば、1代目から2代目に株式を贈与する際、本制度を利用した場合。
経営がうまく行けばいいですが、継続が困難となり廃業したとします。
すると、贈与時に発生した贈与税に利息をつけて納付することになります。
利息にかかる利率は年0.7%ですが、贈与時から全期間にかかるわけではありません。
事業承継税制利用から5年経過後の納税であれば、5年分の利息は免除です。
潰すことを前提に承継する事はほぼないでしょうが、念のため、ご承知おき下さい。
届出書の提出等、手間がかかる
事業承継税制を利用すると、5年間毎年「継続届出書」を提出しなくてはなりません。
では、5年頑張ればいいのかといえば、今度は3年に1度になります。
顧問税理士等がいれば依頼を検討するのも良いのですが、取り扱っている税理士は少ない印象です。
スポットでの依頼を受けてくれる税理士事務所もあろうかと思いますので、導入前に確認しましょう。
まとめ
本記事では、事業承継税制について解説しました。
事業承継税制は、承継を受けた後継者が「会社の事業を継続すること」を条件に、本来かかるはずの税金を全額免除してもらえる制度でしたね。
制度の利用要件は4つありました。
2.会社の要件
3.スタートから5年間の要件
4.最後の要件
本制度のメリットはただひとつ。
対して、デメリットは3つありました。
2.途中で辞めれば利息が発生する
3.届出書の提出等、手間がかかる
事業承継税制の利用を急ぐ必要はありませんが、自社の戦略に本制度が適合するかどうか?は早めに検討するといいでしょう。
本記事が、事業承継税制の利用を検討する材料になれば幸いです。
この記事を書いたのは
ヲタク行政書士®榊原沙奈です。