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死因贈与に必要な手続、メリットと注意点を解説

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当ページでは、死因贈与に必要な手続、メリットと注意点を解説します。

死因贈与とは

死因贈与とは、財産を渡す人の死亡時に効力が発生する贈与契約を指し、贈与契約のうち、「条件・期限付贈与」に分類されます。

単純贈与単純に贈与することのみを定めた契約
条件・期限付贈与贈与の効力が発生するための条件、期限を定めた契約

(1)死因贈与の要件

有効な死因贈与を行うには、下記を満たす必要があります。

1書面による契約贈与契約自体は当事者の合意のみで成立するが、贈与者の死亡後、死因贈与の立証が困難となるため、書面にて契約
2贈与者の意思表示贈与者自身が「自分が死亡した場合、財産を譲る」と明確な意思表示を行う
3贈与財産の明確化贈与の対象となる財産を特定

贈与契約書は公正証書にしておくと、より安心ですね。

(2)死因贈与と遺贈の違い

法律上、死因贈与は下記のように定められています。

第554条(死因贈与)

贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規程を準用する。

引用元:民法|e-Gov法令検索

遺贈とは、遺言により特定の相手を指定して財産を譲ることを指します。

遺贈と死因贈与には、下記のような共通点があります。

遺贈死因贈与
効力発生のタイミング被相続人の死亡時贈与者の死亡時
=いずれも財産を渡す人の死亡時点という点で共通
法定相続人以外への譲渡可能
かかる税金相続税
遺留分侵害額請求対象となる

このため、同様の部分については遺贈の定めに従えば良いのですが、下記の相違点に関しては死因贈与の規定に従わなければならない点に注意しましょう。

遺贈死因贈与
法的性質単独行為契約行為
年齢制限
(原則)
15歳以上18歳以上
受贈者の承諾不要必要
遺言書の作成必要不要
※契約書は必要
撤回可能相手方の同意がなければ不可能
仮登記
(始期付所有権移転仮登記)
不可能可能
不動産取得時の税率不動産取得税法定相続人:非課税
法定相続人以外:4.0%
4.0%
登録免許税法定相続人:非課税
法定相続人以外:2.0%
2.0%

死因贈与を活用するメリット

死因贈与を活用することにより、下記のメリットが考えられます。

  1. 希望する内容の実現可能性が高い
  2. 仮登記により権利を保護出来る

1.希望する内容の実現可能性が高い

死因贈与の場合、財産を贈与する際に条件を付けることができます。

遺贈の場合も「負担付遺贈」として、遺贈を受ける代わりに一定の義務を負うよう指定することができるものの、効力発生が遺贈者の死後であり、希望する内容が必ず実現するとは限りません。

この点、死因贈与は生前の契約を要し、贈与者の死後、受贈者が贈与を放棄することはできず、希望内容を実現してくれる可能性は高いといえます。

2.仮登記により権利を保護出来る

贈与の対象が不動産の場合、贈与者の承諾があれば仮登記を行うことができます。

仮登記とは、不動産に関する所有権等の権利について、権利の変動を暫定的に登記簿に記載・記録することを指します。

仮登記をする大きなメリットは、その後に本登記を行った場合、仮登記をした日に遡って本登記の効力が生じる点にあります。

このため、死因贈与契約後に当該不動産に関する権利を主張する人が現れた場合には、仮登記を済ませた受贈者が自分の権利を主張することができます。

死因贈与を活用する際の注意点

死因贈与を活用する場合、下記に注意しましょう。

  1. 撤回が難しい
  2. 農地の場合、3条許可を要する
  3. 対象が不動産の場合、登記には相続人全員の承諾を要する

1.撤回が難しい

原則、死因贈与の撤回は可能です(出典:民法第1022条)

ただし、負担付死因贈与の場合には、撤回が認められない可能性もあります。

完全に認められないわけではありませんが、遺贈と比べ、撤回のハードルが高いことに違いありません。

1-1.撤回が認められない場合

下記に該当する場合、死因贈与契約が認められない可能性があります。

  1. 負担付死因贈与の場合
  2. 裁判上の和解により成立した場合
  3. 仮登記を行っている場合

1-2.負担付死因贈与の場合

負担付死因贈与の場合、受贈者が負担を履行した時点で、贈与者は少なからず利益を受けることになります。

このため、受贈者が履行に着手した後、贈与者が一方的に死因贈与を撤回すると受贈者は不利益を被ることとなり、簡単には撤回が認められないことになります。

1-3.裁判上の和解により成立した場合

当該死因贈与が裁判上の和解により成立したものだった場合、当事者の一方的な判断により撤回することはできません。

裁判上の和解とは、訴訟手続に関与する形で成立するため、確定判決と同様の効力をもち、原則、1度成立した和解について無効を申立てる事ができません。

このため、どうしても撤回を希望する場合は、当事者同士の交渉による変更を試みるほかありませんが、贈与者が死亡後において交渉は困難であり、実務上は困難を極めます。

1-4.仮登記を行っている場合

死因贈与契約の対象不動産について、条件付所有権移転の仮登記が行われている場合、これを撤回するには受贈者の協力が必要です。

当事者間の交渉が綺麗にまとまれば問題はありませんが、多少なりとも波風が立っていると、協力を得られない可能性がある点に注意が必要です。

誰が見ても明らかに「撤回することがやむを得ない事情」があり、当事者が納得している場合なら、問題ないんですけどね…。

2.農地の場合、3条許可を要する

死因贈与の対象が農地の場合、受贈者が法定相続人以外だった場合には農地法3条許可が必要です。

2-1.農地法3条許可とは

3条許可とは、農地の権利移転に際し、農業委員会から取得が義務づけられているもので、許可が得られなければ契約自体が無効になる可能性があります。

許可を取得するには、耕作できる農地であることのほか、効率的な利用等が求められる点に注意しましょう。

3.対象が不動産の場合、登記には相続人全員の承諾を要する

死因贈与の対象が不動産の場合において、当該不動産の仮登記を行っていないと、執行者または相続人全員と共同して登記申請を行う必要があります。

これを言い換えると、相続人全員の承諾を要することであり、1人でも異を唱えると手続が滞る可能性があります。

このような自体を防ぐためには、死因贈与契約に際し、執行者を定めておく必要があります。

3-1.死因贈与執行者とは

死因贈与執行者とは、死因贈与の執行に必要な一切の権利義務をもつ人をいいます(民法第554条、第1012条)

死因贈与執行者を指定する最大のメリットは、相続人の協力なく、死因贈与による登記申請が可能となる点にあります。

また、受贈者が受けるべき不動産登記を妨害する意図をもって相続人が登記を備えた場合、死因贈与執行者は、当該相続登記の抹消登記手続を行うことができます(民法第1013条)

3-2.公正証書によらない死因贈与契約書を作成した場合

死因贈与契約書を公正証書にしている場合、当該証書が死因贈与執行者の代理権限を証明する書類となり、他の添付書類等を省略することができます。

とはいえ、死因贈与執行者の印鑑登録証明書は必要となります。

一方、公正証書にしていなかった場合には、当該契約書に贈与者の押印(実印)があり、これに対応する印鑑登録証明書が添付されている必要があります。

3-3.契約で死因贈与執行者を指定しない場合

死因贈与契約の中で、執行者を指定していない場合には、利害関係人から家庭裁判所に死因贈与執行者選任の申立てを行うことができます。

申立先は、贈与者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、戸籍書類や不動産登記簿謄本、各種も苦労k等を添付する必要があります。

死因贈与に必要な手続、メリットと注意点まとめ

当ページでは、死因贈与に必要な手続、メリットと注意点を解説しました。

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榊原沙奈
(さかきばら さな)
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